嘘学的書籍紹介


GDCL学会員が、これは嘘学的と考える書籍などを紹介します。境界線上のものも含めたので、全部が全部嘘学的ではないかもしれませんが。



鼻行類 新しく発見された哺乳類の構造と生活
著:ハラルト・シュテュンプケ 訳:日高敏隆/羽田節子
思索社 1,600円

 第二次世界大戦後、南太平洋の島で発見された鼻で歩き、鼻で獲物を捕らえる哺乳類の研究書。まさに嘘学的である。はじめてこの本を知ったのは、もう10年以上前のことだが、いまだにこれを超える嘘学論文を見たことがない。


ウルトラマン研究序説 科学特捜隊の組織・技術戦略を検証する
編著:SUPER STRINGS サーフライダー21
中経出版 1,400円

 ヲタクネタを科学考察する本の草分け。ファンダメンタルな分析の手法は別に新しいものではなく、もっとも有名なものとしてはシャーロッキアン論文などが上げられるだろう。
 本書以降、雨後のタケノコのように類似品が噴出することになるが、どれもあら探しや重箱の隅つつきに陥ってしまっており、現実と虚構の距離の取り方のバランスは、やはり本書が一番うまくできていると思う。


路上観察学入門
著:赤瀬川原平・藤森照信・南伸坊編
中筑摩書房 1,600円

 今や、好事家の遊びから学問まで昇華された路上観察学。嘘学を提唱するにあたり、一番影響を受けている学問でもある。すでに多くの出版物がでているので、初期のものということで本書をとりあげてみた。


新化
作:石黒達昌
ベネッセ 1,600円

 論文の形式をとった創作。絶滅したハネネズミを遺伝子操作によって復活させようとする努力とその結末の話である。嘘学的、というよりは鼻行類の正当な後継者(?)とでもいおうか。会員なら必読。
 前作の「平成3年5月2日,後天性免疫不全症候群にて急逝された明寺伸彦博士,並びに,」も同型式。


妖精のそだてかた
文:葛城稜 画:高田美苗
白泉社 1,800円

 表紙やタイトルからは叙情的な絵本を想像するが、実際は冷徹な視点で記述された博物学的飼育マニュアルである。かなり生々しくかつリアルであり、妖精というタームから誰もが思い浮かべるムードからはかけ離れている。ある種、悪意すら感じるが、情に流されない客観的な視点こそが科学的思考なのだともいえよう。


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NOTHING NOW

スプートニク
編:スプートニク協会+ジョアン・フォンベルタ
筑摩書房 2600円

 米ソ冷戦時代の国家掲揚の名の下、闇に葬られた、宇宙飛行士と一匹の犬の帰還なき宇宙旅行の真実。という名の嘘学的論文集。全体的に散漫な感じがないわけではないが、面白い。


KGBの世界都市ガイド
訳:小川政邦
晶文社 2840円

 KGBスパイの視点から見た世界各都市の生活情報、観光情報というコンセプトは「意図的に異なった視点から出発することによる論理的なズレた結論」という嘘学の本質である。ただ、内容がただの(文章の下手な)回顧録になったりしていて、ちょっと残念だ。


超秘湯!! ガイドブックからこぼれた温泉めぐり。
著:坂本衛
山海堂 1700円

 誰も知らない(あるいは知っていても普通入ろうとしないだろう)秘湯に入る。ただそれだけのために、地図の解析による秘湯発見方法や、達成するために独自の入湯方法を設定する合理性が実に達成学である。文庫化(ちくま文庫)もされている。


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NOTHING NOW

本の虫 その生態と病理 (新)
著:スティーブン・ヤング/訳:薄井ゆうじ
アートン 1500円

 本の虫という生命体に関する諸解説。なんだけど、惜しいかな“本の虫”に対するスタンスにぶれがあって嘘学的には弱く、たんなるジョーク本的になってしまっている。アイディア自体は面白い。


アフターマン (新)
著:ドゥーガル・ディクソン
ダイヤモンド社 2400円

 5000万年後の地球のマクロ生態学。知的興奮する本のひとつ。「仮に○○だったら」からスタートする論理的展開はまさに嘘学的。小難しい事をはしょって空想動物絵本としても面白いしね。


フューチャーイズワイルド (新)
著:ドゥーガル・ディクソン
ダイヤモンド社 2400円

 アフターマンからさらに時は進み2億年後の世界! 図版がCGになって、より本当っぽくなった。あるいはよりウソっぽくなったか(?)。DVDも発売されている。


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NOTHING NOW

ミスタードーナッツのプレミアム
ミスタードーナッツ編
扶桑社 900円

 嘘学本とは少々違う。あえて言うならば達成学だろうか。実は、GDCL学会員はミスド好きで知られており、毎回点数集めに精を出している。故にこの本はバイブルとなりえたのである。


われ笑う、ゆえにわれあり
著:土屋賢二
文春文庫 438円

 大雑把に括れば「ただのユーモアエッセイ」なのだが、前提条件が(意図的に)歪んでいるため、論理の展開は理路整然としているにも関わらず、とんでもない結論に至る部分など、嘘学的要素が強い。筆者のエッセイは数多く発刊されているが、第1作品ということで紹介する次第。


京てぬぐい 永楽屋コレクション (新)
ピエ・ブックス 2800円

 京都の老舗てぬぐい専門店、永楽屋細辻伊兵衛商店のてぬぐい図版のコレクション。昭和初期のてぬぐい図版のなんと粋で洒脱であることか。しかし惜しいかな、モノクロページもあってそれがすごく悔しい、できればオールカラーで改訂してほしい。


たほいや 大言壮語
フジテレビ編
フジテレビ出版 1,100円

『言葉の数だけゲームはある』
 フジテレビの深夜番組より生まれた知的言葉遊びゲーム「たほいや」。本書はその簡単お手軽解説本である。一時期、学会員は毎週のように広辞苑片手に遊んでいた。これは本が嘘学なのではなくゲームシステムが嘘学的という面白い例である。


禁断のペット シーマン
ドリームキャスト 他
セガ

 音声による会話が可能な育成シミュレーションという部分以上に、シーマンという生命体の実在の構築の仕方が練りに練られている。「鼻行類」の方法論の直系の子孫といってもいいだろう。その点において他の育成ゲームよりも100歩先を行く。ただしゲーム自体は難しいですね。



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