(監督:庵野秀明(新人))
欲しいものがあっても手段は選ぼう。というのが教訓か?
世間一般での感想・評論の基調は大まかにみて2通りに分けられるだろう。
1)援助交際という社会現象について。確かにこの作品のいちばんキャッチーな部分なので、そのような視点で考察しようというと思うのはしようがないのではある。しかし、原作でも同様なのだが、これは援助交際を“テーマ”にした話ではない。援助交際を“モチーフ”とした話なのだ。なにかを手に入れるために失うものと、自己認識とでもいおうか。たまたま現在において女子高生が手っ取り早く大金を手に入れる手段としてリアリティがあったために選ばれただけで、もし銀行強盗が現代の“リアル”なら、おそらくそれを描いたであろう。
2)エヴァとの比較。確かに演出的な面において相似相対する部分は多い。それを事細かに「これが同じ構図」とか「元ネタはこれ」とか。しかしそれはそもそも監督の作風なんだから、そればかりを注目してもしようがないのではなかろうか。例えば相米慎治が長まわしをしたからといって、長まわし部分のみを抽出して比較したりしないっしょ。演出面の類似点のみを比較し、テーマを演繹しようとする論旨はあまり意味がない。ようするに比較ではなく、この作品について語りなさいということなのだ。
才気だった絵づくり。これが一番の特長だろう。監督の持ち味ともいえる。早いカット割りや意表を突いたカメラ目線。スクリーンにとらわれないフレーム。一歩間違えると観客をなおざりにしてしまう程の画面づくりは、はじめは鬱陶しいが、やがて快感へと変化する。ある種ドラッグに近い感覚がある。
小汚いオヤジやヲタクとの援交風景は、わざと観る側の嫌悪感を抱かせる作りで、あいかわらずな確信犯ぶりを遺憾なく発揮している。(原作を未読なのでなんともいえないが)もともとそういう話なんだろうけれど、映像によるインパクトはすげーなと思う。(ま、AVに比べれば大人しいもんですがね)
全体感想としては、一般向けエンターテイメントとしてはイマイチ首を傾げるところもあるが、俺的にはすごく楽しめた。多分、絵づくりに対する感覚が俺にあってるんだろうな。故にヒトには薦めない。