(主演:佐伯“毎日が”日菜子)
死して還る。
ホラーじゃないようなホラー。でも決してSFではない。
惜しい。てのが一番の感想かな。原作を読んでからいうべきなんだろうけれど、せっかく前半、科学的アプローチで謎を追求して「これはっ」と思わせておいて、結局ただのホラーでしかなかったてのは、実に残念。光刺激による肉体変位はいいとして、それがDNAレベルまで到達するのか? また単純な光刺激ではない活字によって変位は起こるのか? そしてなによりも全ての起源が結局“呪い”としてしまうのか。というようなオカルト的側面を理詰めで突き詰めてくれたなら、完全脱帽だったのに。オカルトと科学は決して相容れない存在ではないものなのだからさ。
という原作の持つ問題点を引きずった(と思われる)ためか、後半はかなり突拍子もないストーリー展開になって、ついていくのがきつかった。
にもかかわらず、映画としては私は「リング」より「らせん」の方が好きだ。飯田演出は実にクール/シャープ/ソリッド。冒頭、一般的には実にエグい映像があるが、私はすごく上品に作ってるな、と思った。
だいたい、ホラー作品は恐がらせのツボを使えば、比較的簡単に怖い話を作ることが出来る。リングにおける問題点はここなのだ。日本人が確実に怖いと思うモチーフを使うことで、“怖い映画”を作り上げているのだ。もちろんこれらパーツを的確に使う職人としての勘についてはうまいなとは思うけれど、それはある意味卑怯でもある。だって、ここでこれを見せれば怖いよっていう事をそのままやってるだけだもの。お化け屋敷と一緒だよ。その点において「らせん」はあえて“『怖い絵』という伝統芸”を使わずにホラーを作ろうとして、映像に結実させている。
「リング」は怖い映画だったが、「らせん」は面白い映画だった。