(主演:松坂慶子)
…相手が打ち返せないところに打ってはいけません。それができなければ卓球は勝てません…
『卓球』と『温泉』というオレ的2大娯楽をテーマにされてしまったら、それはもうゴジラ対キングギドラ、あるいはヒロスエ対エンクミみたいなもんで、当然のように見なければならない状態なわけである。で、そういった場合には往々にしてガックリして家路をたどる羽目になるのだが、今回は、足どりも軽かった。そう、よかったんです。
始めは生活に疲れた表情のくたびれたオバサンの松坂慶子が、前半部のヤマ場(?)、話が起から承へ移る卓球ラリーのシーンから、どんどんいい表情になっていく。実に楽しそうに生きている。そんな表情。見ているほうもうれしくなってしまう。
そのターニングポイントとなるラリーシーンだが、カメラは横に固定され、ひたすらに打ち合う姿をとらえる。
カコン、カコン、カコン、カコン、カコン、カコン…
永遠に続くかのような、様々な想いをのせたラリー。
はっきり言って、このシーンで完全にツボにはまったね、オレは。
映画の主題自体は“普通の主婦の話”であり、家族の復権の物語であるのだが、それを声高に描くのではなく、あくまでも温泉街と卓球の話を前面においているところが奥ゆかしくてよろしい。
確かに細かいところをみると叙情派に片寄りすぎているとか、牧瀬里穂がちょっと浮いてるとか、クライマックスがあざといのではとか、音楽に頼りすぎているとか、あるんだけれど、そんなことはすべてとりあえずわきに置いておいて、オレは許す。