(監督:マニラトナム)
ウエストサイドストーリーではじまって、オリバーストーンばりの社会派でクライマックスを迎える。
面白かった。というより考えさせられた。
出だしはすごくドラマチックな純愛物語で始まる。歌も踊りもあるが、ただのミュージッククリップではなく、細かい演出がなされている。本心ではお互いを求め合う二人の気持ちを切々と描いている。うまい。美しい。
駆け落ち後のつつましくも微笑ましい生活ぶりや、田舎での二人の親達の人間模様なども、実にハートフルかつ丹念にみせる。
やがて訪れる悲劇と再生。決してハッピーエンドなどではないが、確かに未来はあるのだ。そんな印象を残して幕は下りる。
自分は“無条件で信じるもの”を持たない。それゆえ理詰めでしか想像できないし、よけいに考えちゃうのかもしれないけれど、しかしこのような事件は宗教に限らず起こりうる話だ。それに最近の日本じゃ彼岸の火事とノンキに構えていられる問題じゃない。
堂々の3時間。十分に面白い。ただ、内容が内容だけに中途半端なダンスシーンは逆にちょっと浮いてしまうのね。なくてもいいじゃんと思ってしまう。確かに、冒頭の結婚式のシーンと、“娘が欲しい”川辺の城跡(?)シーンはすごい。踊りの中にお互いの気持ちがきっちりと描かれる見事な演出だ。が、反面、後半の突然怪しげなダンスチームが出てきたりするミュージカルシーンはちょっといただけない。こういったさじ加減が難しいところですね。