CHART-DATE : (1998/10)
作品
方体
… CUBE

(原案協力:ルービック氏)


お話

 逃げる。やられる。キューブ。


お話

 ひさしぶりに話に没入した。恐怖映画ではないです。恐怖映画というより不安映画。いみじくも、後ろの席の観客が見終わった後、「恐怖映画より怖かった」といっていた。ひたすら続く緊張感で息を抜くことができない。すこぶるつきの密室迷路劇という閉塞感がそんな感じを生んでいるのだろうか。見ているときはあまり窮屈感はなかったが、でも無意識のうちに影響が出ているのか。

 眼福である。舞台美術がすごい。裏話では実際には1部屋だけのセットで造られたということだが、それが逆に距離感を喪失させ無限に続く悪夢のように思わせている。見事。

 うたい文句のゲーム感覚とかRPG風というのは、確かに間違っちゃいないが、でも違うんだよね。それは表層的な部分しか観てない感想である。トラップパスワードの存在とか、数式の法則のようなシチュエーションがそう思わせるだけで、一番トリッキーなのは設定ではなく、入り組んだ話自身、描きたいテーマ自身である。
 各部屋に仕掛けられたブービートラップは、映像上では4つしかでてこない。またそれで死ぬのも一人(あるいは二人)だけ。人は、人の心の疑心暗鬼や妄想妄執によって死んでいく。映像のビックリじかけよりも人の心の暗部こそが恐怖なのだ。

 全て同じ形の部屋という非現実的な状況設定であるが故に強調される“ヒト”。極限状態において人はどう行動するのか、日常の仮面を外されることによって人はどうなってしまうのか。ある意味、哲学的思弁映画。人間性の映画。生存する意義を問う映画。かも。

 もっともそれは深読みしすぎかも。あくまでもそういう見方もできるということで、不条理恐怖映画として観るべきなんだろうな。

 お勧め。ただし観終わった後すごく疲れます。救いもカタルシスもないし。


お話
★★★★

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