(映画:ドイツ映画)
ろうの両親に育てられた少女が経験する、出会い、恋、悲しい別れ、苦悩、和解、そして希望の物語。
良質の物語。
ろう者がメインの話ではあるが、へんにウェットに描いてお涙頂戴劇になっていないところが、実に清々しい。ろう者はハンディキャップではあるが、それを可哀相な存在、弱くて守るべき存在、というような描きかたはしない。そういう人達がいるのだ。という、対等なレベル、ある意味“個性(パーソナリティといってもいい)”というレベルで扱われている(本来、それが普通なのだ)。例えば、両親が異国人で、その国の言葉を話せないんですよというシチュエーションでもこの話は成り立つ(ただし、学習等によって回復するというようなことがなく、絶対の断絶であるところが違うといえば違いますが)。
あえて誤解を恐れずにいってしまうと、要するに、あくまでも設定のひとつとして存在しているのだ。その中で、親子の絆を示すものとして、手話がコミュニケートの重要なツールとして登場してくる。
つまり、コミュニケートの物語なんだ。手話という強固なコミュケートを持った親子が、それゆえにそれぞれの自立に際して苦悩して、理解し合うまでの話。人と人とのつながりの物語。家族の絆の物語。それをひとりの少女の成長をとおして描いている。
地味な作品ではある。しかし、見終わった後、気持ちが深く深く心に染みわたる。