(主演:織田“都知事と同じ青島で〜す”裕二)
青島刑事、静かに眠れ… ってそのまんまかい!
TVシリーズとどこが違うといわれても、話のつくりはそのまんま。映画だからといった気負いなどない。完全にTV版からの続編として存在する。だから人間関係の説明やこれまでのお話といった、TV版総集編的なシーンは一切なく、観る側は設定を知っていて当然なつくりとなっているように見える、一見はね。
だが、その実、イチゲンさんを排除しているということはまったくない。人物関係や性格設定などを説明していないのではなく、小さなエピソードに絡ませながらそこはかとなく描いているので、知らなくても十分に理解/推測できるのだ。知っている人には“署長、相変わらずだなあ”と笑え、初めての人は“署長だってうちの会社の上司と同じなんだ”と笑える。実はこれってどんな映画についてもいえるもっとも基本的なサービスなんだけどね。それができていない作品が多すぎる昨今、見習ってほしいものだ。
話的には、ちょっと荒っぽい部分はあるが、緊張と弛緩のバランスや、(踊る大捜査線という世界観の中において)十分にリアリティのある犯罪と捜査、きっちりとしたカタルシスなど、ツボをついたつくりでグー。
もちろん、TV版を知っている人はより楽しめる構造も持っていて、2時間という枠を最近、楽しめるようになっている、もともとコメディだから、知らなくても楽しめる。なんていっちゃ身もふたもないですけれどね。
ここ数本のTVスペシャル版ではお笑い方向に走りすぎていてちょっとよろしくなかったのですね。もともとはきちんとしたドラマの隙間の中に細かい笑いが入ってるのが、オフビートな笑いを醸し出していたのだが、隙間自体を拡張し過ぎた感が強くなって、ちょっと行き過ぎかなと思われるところもあったのです。が、映画はそこらへん抑制を効かせていて、ファーストバージョンの感じが戻ってきている。
そもそも「踊る…」の魅力を語るとすれば、ニッチ商品であるといえよう。大まかな捉え方としては、銃を撃ちまくり走りまくる系刑事ドラマへのアンチテーゼであり、いままで組織として表現され得なかった警察(ちょっとウソ)や、公務員としての警察を前面に押し出したということである。
しかし、本当はそんなパターン破りがよかったのではないのだ。なりよりも世界観の統一ができていたことが成功の理由である。その世界の中でのリアルをきちんと構築しなければ、ウソがウソとして浮いてしまうわけ。作品中ではそのウソや誇張(例えば、所轄と本庁の関係)が、“そういうものなのだ。これがこの作品におけるリアルなのだ”と納得させることができたこと。これこそが重要なのである。