CHART-DATE : (1999/01)
作品
次元旅行者
… なぞの転校生

(主演:拝啓刑事プリ夫様)


お話

 そして孤独に至る。


お話

 「なぞの転校生」といえばジュブナイルSFでショウネンドラマシリーズなわけだが、それ的なものを予想していると足をすくわれる。監督小中和哉は以前から少年ドラマシリーズにこだわっていることは知っており、今回もその延長線上にあるのだろうと思っていたのだが、あにはからんや、かなり重い話なのだった(もっとも意識してそうなったわけではないらしい)。
 次元ジャンパーとなってしまった主人公は、世界を救うためにいままでの人生との別離と、永遠の孤独を選択するわけだ。それを自分で人生を選ぶこと、自立すること、ととらえればある意味ハッピーエンドともいえる。でもやっぱり悲しい話だよね。だって世界の犠牲になってたった一人で放浪していかなければならないわけだ。
 ようするに人柱になる側の人間からみた“柱”となるまでの心の動きを描いた話ということができる。

 演出面からみた場合、かなり雑、というか無駄な設定(?)ところが多い。まず主人公の本心を隠して生活している葛藤は話の展開に全然生かされていない。もっと枝葉を切りそろえてすっきりさせてもよかったのではないだろうか。  それに別次元がレジスタンスと体制の戦争状態っというのも、なんだかなぁという感じ。なぜその世界の人達を助けようと思うに至るのか説明がステレオタイプで、全体の話のトーンがそれに似合っていればいいのだが、なにしろ出だしが出だしだけに、すごい無理があるような気がしてならない。病院に閉じ込められてしまっている世界には結構“おっ”と思ったのだが。

 最近の映画って、見方をかえると精神病理(?)的な解釈ができる描き方が多いような気がするのは深読みし過ぎなのだろうか。今回は、「中学のとき好きだった男の子の自殺に遭遇して精神のバランスを崩してした過去を持つ少女が、彼の死を受け入れようとして失敗し、最終的に自分の妄想の世界に閉じこもってしまう話」としてみることもできる。この場合、佐藤康絵はもちろん空想上のもうひとりの自分ですね。

 別に、少年ドラマシリーズ路線な映画を求めていたわけではないが、話として少々まとまりがなさすぎたかな。残念である。


お話
  1. 次元ジャンプ後の世界での修正作用はいいとして、行った先の世界の“自分”はどうなるのだろうか。それってパラレルワールドもののもっとも根本的な設定だと思うのだが、そのエクスキューズがまったくないというのは、いかがなもんだろうか。
  2. 佐藤康恵はいい。ホラーな顔つきで。絶対人の血を啜ってそうな感じで。笑い声は当然『ケケケケ…』だ!
    新山千春も好きなんだけれど、ロングストレートはちょっと似合わない。ウェーブ系の髪形のほうがあっていると思うのだが。まあ、病院シーンでの密編みはぐっときたが。

お話
★★ ☆☆☆

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