CHART-DATE : (1999/03)
作品
地球の守護神
… ガメラ3

(主演:前田愛とみせかけて実は藤谷文子だったり)


お話

 天災は忘れた頃にやってくる。


お話

 見終わった直後は、「うっそ〜」とか思ったんだけれど、時間がたつにつれてじわじわとよかった感がわき上がってくる。
 はじめに感じた肩すかし感は、たぶん画面の派手さやストーリーのまとまり方が前2作とくらべずいぶんと違っていてとまどいを感じたせいである。しかし、駅へ向かう道すがら「待てよ」と、「これもありだろ」と思えはじめて、やがて恐ろしくクオリティの高い絵づくりや、破壊の爽快感。登場人物達それぞれの想いの情感こもる演出に想いが至る。オーケー、認める。認めなければならない。面白かったのだ。

 誰もが一番引っかかる問題点は、あのカタルシスに欠けるラストだろう。
 ガメラは果たして生き延びることができるのか。日本は、人類は生き延びることができるのか。その答えはおろか、ヒントもないまま、さあ、これから最後の闘いが始まるというところで話はカットオフ。確かに、不親切といえば不親切だし、叫びたくなる人も多いのはわかる。しかしすべてがきちりと終わらなければならないというルールはない。そういう終わりかただってあるのだ。なにより今回のガメラのもっとも重要なモチーフ『敵対と和解』についてはきっちりと決着をつけているのだ。だからこれもアリなのだ。
 ただ個人的にはオッケーなんだけれど、これを納得できない人の方が多いんだろうなという推測は容易で、そうなるとせっかくの次回作(別にガメラに限った話ではなく)へつながっていかないという不安がでてくる。俺としては、このチームにはまたすごい映画を作ってもらいたいので、だから商業的興行的部分ではこれでよかったのかなぁ、とは思うね。

 絵づくりについてははっきりいって最高です。怪獣の巨大感を十二分に堪能させてくれる構図。実写と特撮部分の違和感など微塵も感じさせないリアルな質感。空気感。渋谷カタストロフの見事さや、京都炎上という都市崩壊の妖しい魅力。イリスと出会う森のシーンの幽玄な美しさ。フルCGによるイリスとガメラのスピード感あふれる空中戦。演出の見事さと相まって、特撮だけが浮いてしまうということがない。
 ラスト、燃え上がる炎をバックに手負いのガメラがそれでも死地へ向かおうとする悲壮なまでの姿、ここで泣かなくてどこで泣く。

 なぜ怪獣は日本に攻めてくるのかという問いについては、結局回答はなかったように思える。今回の出現の説明はあるけれど、3作通しての、一般論としての提示ではない。それが残念ではあるが、もっともそこまで踏み込んでしまうとガメラという枠でやるべきかどうかという問題もあるのだろう。勿論、提示できるならそれに越したことはないのだろうが、その場合、そこにかなりの時間を割くことになるだろうし、そのために話が冗長になってもね、というところだろう。
 今回はこの程度。次回以降に、違うフォーマットでこの究極の問題に手をつけてほしい。

 前宣伝では破壊のかぎりを尽くす厄災としてのガメラを描くといっていたが、思ったほど派手ではなかったな。こっちが構えていたせいかもしれないが、思ったより上品。もっと阿鼻叫喚になるのかと思っていたのだが、とりあえずターゲット層を考えるとこの程度で押さえたのだろうか。
 話の展開にもかかってくるのだけれど、俺としてはガメラ排除派と擁護派の確執やパワーゲームの部分をもっと描いてほしかったし(だって山咲千里や手塚とおるってただ怪し気なだけでキャラとしてうまく使われてなかったでしょ?)、だからそれを描くための重要なモチーフとして、渋谷カタストロフはもっとクールかつワイルドに描かれるべきだったのではないかと思う。
 もっともあくまでもガメラは人間サイドの存在として設定されているわけで、そのさじ加減は難しいのかもしれない。

 ともあれ、一応は見てほしい。
「きゃっぷや〜んは評価するつもりです。最後まで…ひとりになっても」
なんてことになったら嫌だなあ(笑)


お話
  1. 一番グッときたシーン。なんつっても渋谷でのガメラ着陸のシークエンス。ほら、変形ものに弱いからさ、俺。
  2. 反対に、ちょっと引いたのは伝奇的モチーフの導入かな。3作品まとめての話になるんだけれど、ガメラの存在意義について伝奇的解釈を用いるのは、方法論としては妥当なんだけれど、でもそういうの個人的にちょっと食傷気味なので。もう少し、別のアプローチのしかたでもよかったのかなぁと思った。ないものねだりだね。
  3. “朱雀=ギャオス”“玄武=ガメラ”と位置づけるなら、青龍や白虎はどうなっとるのかという謎が残る。どうせ“青龍=ゴジラ”説みたいな『ヲな解釈』は多く出るだろうけれど、それは禁じ手。
  4. 前田愛。オッケー、アイラビュー。文句ナシなんだけれど、あえていうならば台詞での演技が達者すぎてそれに流されてしまうこと。もう少しトーンを落として、表情や体の動きで演技ができるようになれば完璧なのに。例えば、イリスと森で出会うあのシーンで、ただあの台詞をいうのではなく、小さく泣き笑いのような表情が入ったりすると、よりエロティックになっていいのに。ま、あと数年もすれば… はっ、またいらんことを書いてしまった。
  5. 藤谷文子のやや棒読み気味の台詞まわしも実は好きなんですけれどね。
  6. ゲスト俳優陣が豪華というか、こっちサイドの人が、ちょい役で出てたりして贅沢でしたね。
  7. 邦画に関してはよほど腐れ映画でない限り基本的にパンフは買うようにしている。だから今回も2種類ちゃんと買ったけれど、財布に厳しいっす。しかも読んでみたら1500円の方だけで事足りてるし。そういうことはちゃんといってほしいんだよね。トホホ

お話
★★★★

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