(監督:ヴァルテル・サレス)
年増の女と孤児がロードムービーって感じ?
観てるときは「地味だねえ、でも、そこそこいいんじゃない?」なんてけっこう冷めた目で観ていたつもりだった。ところがエンディングシーン、曲が流れはじめる。するとどう。無意識のうちに落涙。もうマジ涙っすよ。いいトシこいて。いや歳とったせいでか? いや、だから、チクショウ! オレを泣かせるなんて卑怯なり!
ジョズエのために、口紅をひき、ドレスを着て、別れのあいさつもなくバスに乗りこむ。そして二人の思い出の写真を見、笑うんだよ。別れの悲しさよりも出会えたことの喜びのために。
もともと別れを予感させる話なのだ。しがない代書屋の中年女と、孤児となった少年の旅の目的は、少年の父親を訪ねるということ。つまり別れを前提に旅しているわけでしょ。そんななかで二人の関係が変化していくという、ロードムービーの基本をやってくれているわけ。
まあ、なんだな。人が知り合い、理解しあい、そしてだからこそ別れなければならないというシチュエーションに泣けないわけがないんだよ。ある意味、定番の泣きツボだし、泣くのはしようがないんだ。
映像が予想外に恐ろしく美しい。リオの雑踏。ブラジルの自然。田舎町の祝祭。名もなき人達の表情。どこを切り取っても絵になる。これだけでも見る価値がある。断言する。
それに被さる音楽は哀愁漂う南米のバラード。これがブラジル音楽なんだ。
映画のはじまりはさまざまな人達の言葉で、そして最後も語られる言葉で終わっていく。それは人の“思い”というものを見る者に鮮明に訴えかけてくる。
「手紙」という心を言葉で表現することの意味、語られることによって想いが伝わることの純粋な感情。なるほど言葉の力はすごい。だからこそ代書屋という職業を題材に選んだのだろうし、それは見事にフィルムに結実されている。
露天の記念写真屋。ポラロイドじゃないの。スライドなんだよね。ビューアーつきで。おもしろいねぇ。