CHART-DATE : (1999/04)
作品
人生は美しい
… ライフイズビューティフル

(監督脚本主演:ロベルト・ベニーニ)


お話

 ファンタジーメイカーの生き様。


お話

 前評判でよくいわれているような“感動で泣く”ということはなかった。ただひたすらに笑いころげ、楽しんだ。そしてエンドクレジット。そこで最後のモノローグを反芻していたときに。きた、ぶわーっと。落涙、落涙、また落涙。
 自分はこれみよがしの悲しいシーンというのはあまり好きではない。例えば「死」「別れ」「いわれのない非難」というようないかにもここで泣け的な演出は、なんか作為的にみえてしまって逆に醒めた目で観てしまうのだ。ひねくれているとは思うのだけれどね。
 じゃあ、オレの泣きツボはなんなんだろうと考えると、それは「生きてきた証の繋がり」「人に想いが伝わっていくこと」。そのせつなさ加減にグッとくるらしい。
 だからこの映画では、主人公グイドがアウシュビッツに連行されるとか、射殺されるとかそういうシーンはなるほど悲しい辛いシーンではあるけれど、それは話の展開上のことで、そこで泣くとか心が動かされるとかいうことはあまりない。しかしラストのモノローグ、「これが私の物語…」が実は息子ジョズエの台詞であることがわかり、その意味を考えていたとき、“ああ。こうやって父親の命をかけた世界の構築とその想いはきちんと伝わっていったのだな”と思ったとたん、ンガーッときた。そういうことなのだ。

 話自体はとても明るく面白い。特に前半のエピソードは、その伏線の張り方活かし方が完璧。冒頭の国王のエピソードから、ドーラとの出会い。「ボンジョールノ…」という台詞が生きてくる。そしてお調子者だが前向きな主人公に一気に引き込まれていくのだ。
 帽子のエピソードや天から降ってくる鍵、そんなささいな小ネタが、やがてあのような見事な奇跡になっていく。ショーペンハウアーのくだりも度々引用されるが、これがあるときは馬鹿バカしく、あるときは愛おしく、またあるときはせつない。

 後半の収容所は辛い話が続く。おかしくもあるんだけれどそれはシニカルな笑いなのだ。ナチス医師とのちぐはぐな絶望などはその最たるもので、おかしいのだがでも辛すぎる。特に強制強要というものがすごく嫌いなオレにはちょっとアレだった。
 クライマックスのファンタジーの完成ともいえる戦車の登場は偶然ではあるのだが、悲しい結末の中の小さな奇跡でもある。

 総じて、ここは笑うところ、ここは泣くところ、みたいな仕掛けがミエミエであざといものを感じるのはマイナスだが、それでも十分におもしろいのだがら、しようがないよなぁ


お話

 作中、死については極力間接的表現を用いている。例えば叔父さんの処刑は積み上げられた服だけだし、主人公の死は銃声のみ。だから逆に実は大どんでん返しがあるんじゃないのかとも思ってしまったんですね。もしかしたらグイドは助かったんじゃないのかとかね。まあそこまで甘くはないんだけれど、もう少し直感的にわからせてくれてもよかったんじゃないのかなあとも思った。
 ちなみに死の表現においてもっともきたのは残された猫。オレってば。


お話
★★★★

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