(主演:ILM)
時間を超越した愛。あるいは不倫カップルの顛末記。
まあまあ楽しめる娯楽SFX映画という予想どおり。話も演出も眼福も平均点。それ以上でもそれ以下でもない。もちろんそれはそれで“アリ”。堅実にヒットさせる映画というものも必要なのだ。
冒険活劇である。
制作者サイドも「モンスタームービーではなく、冒険活劇を作る」と明言しているし、実際、そういう映画になっている。しかし、そのせいかどうかわからないが、ミイラ男出現の恐怖というものが、本当にいっさい感じられないのだった。ミイラが出てきてなにか不都合でもあるのか? ないじゃん。みたいな感じね。
とにかく敵役、神官イムホテップがちっとも怖くない。邪悪な存在、世界を滅ぼす存在といわれても、全然実感がないのだ。だって、そもそもの発端からして“不倫が見つかって罰を受けた”でしょ。所詮は色恋沙汰のトラブル。犬も食わないって。それにあの状況では、報われぬ恋の二人、神官側に肩入れしたくなる気持ちもわいてくるし。
そんなこんなで、とんでもない拷問を受けたりして全世界を恨んじゃったのね、と想像もできる。ところが、復活してもヤツの狙いは「愛する人の復活=恋の成就」。じゃあ、別にほっておけばいいんじゃないの? と傍で見てて思わない? 思うでしょ。つまり、王様側が野暮天ばっかりだったために起こった些細な悲劇。とそういうわけだ。
悪党は誰? といえば、むしろ主人公の方がヤな奴だ。簡単に仲間を見殺しにする。例えば、市内でマンホールに逃げるとき。あるいは神殿内でミイラの集団に襲われたとき。別に冷酷なキャラというわけではない。そのときできる最善策をとったまでなんだろうけれど、大目的のためにはある程度の犠牲はやむなしという感じがする。いや、ただの熱血正義漢よりはよっぽどカッコイイともいうんだけれど。
話の展開上、なんか敵味方が入れ替わりたちかわりするのが、コンピュータRPGみたいで、ちょっといやだった。とあるイベントで仲間が増える。次のイベントに備えて不必要なキャラを排除するために、犠牲になって死亡。みたいなシステム的なパターンがあるようで。
SFXは流石。これを見に行ったといっても過言ではない。襲いかかる砂塵、動き回る死体。もはやCGでできないことはないところまで映画はきている。めったなことでは驚かなくなってしまったが、この映画はビジュアルイメージが新鮮で楽しめた。(もっとも、冒頭の古代の神殿の様子は、背景のマット合成ばればれでちょっと寒かったも)
イントロ部分の事の発端の説明だが、延々ナレーションでやられたのもちょっと。いかにもここは説明のパートです的つくりってのはどうかな。もっと現代の話(本編)の中に、挿入する形で説明していってほしかった。でもこの手のジェットコースタームービーは、へんに途中に説明シーンを入れて流れを止めるよりはよかったのかな、とも思う。
宣伝ほどの大作ではない。手堅くまとめましたという感じは否めないが、逆にタイトだからこそよかったのかも。それなりに楽しめた。