(王子様:及川光博)
世界を革命するために!
TVシリーズを映画にする場合にはいくつかの手法があって、ひとつはダイジェストとして再編集(映像を新作する場合も含む)する方法、後日談(サイドストーリーも含む)とする方法などがポピュラーである。
ダイジェスト手法ははじめて観る人でも話は分かるが、何十時間もかけて語られた物語を2時間程度に圧縮するため、内容が薄っぺらくなってしまい“話については分かった”レベルで終わってしまう場合が多い。
後日談手法はあらかじめキャラだちできているため、TVシリーズを観ていた人たちにとっては面白い作品となる場合が多いが、イチゲンさんにはなにがどうなっているのかさっぱりわからない間口の狭いものになってしまいがちである。
で、これをアウフヘーベンした手法が、設定を生かしてかつまったくの新作を作るというものである。これは一見もっともうまくいく手法のようにみえるが、新しい作品を作らなければならないにもかかわらず、元となる作品との相似、相違をきちんと示してやらねばならず、さらに元作を超えなければならないという実にハードルが高い方法なのであった。
結局、TVシリーズを映画化する場合、それを作品としてきちんと成立させるのは実にリスキーなのではないか。そう思う。
さて、ウテナである。TVシリーズで思いきりはまった自分としては、それがどうリメイクされるのか楽しみだったのだが、うーん、あのケレン味あふれる演出、エロティックなモチーフは健在ではあったのだけれど、あのときの高揚感はもはや感じられなかった。やはり時間をかけて濃密に描かれ完結した(ここが重要)作品を再体験することの難しさを感じてしまった。
テーマ的にはTV版と同様で、『世界の革命』=『モラトリアムな閉じた世界からの脱出』は変わっていない。とゆーかより鮮明になっている。TV版が一人の妄想に取り込まれそれに満足しているモラトリアムという設定から、各人が各人の過去の幻想という子宮から出ようとしない子どもというものに変わってるせいだろう。自らの殻を破壊せよというテーマがさらに明確になっているようだった。
ただ、それを見せるにあたって、無駄なお遊び、ファンサービス的な部分がもったいない。もっと削りこんで削りこんでソリッドなつくりでもよかったのではないかね。もう少し整理してくれてもよかったように思う。