(主演:インドの織田U2ことシャールクカーン)
「花嫁は奪った男のものだぞ」「それはお父さんの時代の話だよ」「恋に今も昔もあるのもか」
タイトルだけを見ると、なんだかなぁって感じなんだけれど、実はものすごく面白い。
前半の舞台はロンドンを起点としたヨーロッパ。ロードムービー的な趣きも加味されて、旅情気分も満点。
卒業旅行で出会ったふたりの基本に忠実なボーイミーツガール系ラブコメ。出会ったときはなんか軟派でヤな奴だったのに、次第にどんどん惹かれていくふたり。ああなんてお約束なんでしょう。でもいいんだ、これが。ラブコメ好きにはたまらない。グッときたらあっという間に交わってしまう短絡的なアメリカ映画と違い、キスをするのもままならない、じれったさ加減や一途な想いなどがなんともいえずグー。
主人公ラージが、本気の自分に気づく橋の上でのシーン。ヒロインのシムランが自分の気持ちに気づくロンドン駅でのシーン。その心の動きが軽やかなドラマの中できっちりと骨太感を作り出している。
で、後編。舞台はインドに移る。内容もラブコメから直球勝負のメロドラマとなる。愛する人と添い遂げるためにインドの慣習に果敢に挑むふたりの物語(というほど堅い話じゃあないんですけどね)。許嫁の元に嫁ぐシムランを奪おうとするラージではあるが、決して駆け落ちをしようとするのではなく、自分なりの方法で両親を(正確には父親をだが)納得させようとする努力が、涙ぐましくも楽しい。
ところが、そこにラージの(この息子にしてこの親あり的)父親が登場し、さらに話はドタバタ劇風にややこしくなっていく。
インドの伝統的な結婚式の段取りを知ることができてそれもまたいい。
あえて不満をあげるなら、クライマックスでのハッピーエンドへ向けての流れがちょっと不明瞭で、ルーティンワークとしての格闘シーンはまあしようがないとしても、それを見てなんで父親が結婚を納得したのかが今ひとつ不自然なところ。冒頭で父親がロンドンでの生活でインド人としてのアイデンティティに苦悩するといういい導入の仕方をしてるのだから、そこいらへんとうまく心の動きをうまく結びつけて描き出してくれれば、完璧だったのに。惜しい。
あと、主人公の父親とヒロインの叔母とのいきなり燃え上がる恋模様をもう少しうまく拾い上げてあげてほしかったな。
映像的な見どころとしては、ダンスシーンもさることながら、ヨーロッパ、特にスイス(?)の山並みの美しさ、そしてインドパンジャール地方の一面の黄色い花畑の美しさ。
とにかく、単なるラブコメじゃなく、インド人としてのアイデンティティの物語でもあり、3時間といいう時間を感じさせない見事な映画でした。