(小道具:ギネスをジョッキで)
かくして完全犯罪は成立した。
巷でいわれているような、ほのぼの系作品かと思ったらさにあらず。けっこうシニカルでブラックな味付けの映画。アレレ、思ってたのと違うぞって感じ。
主人公が当選宝くじをネコババしようと、死体そっちのけであくせくする強欲ぶりが、かなり嫌らしく感じられたというのが、そのもっともたる理由である。当たりくじの所有者がわからないときも、おこぼれに預かろうとあの手この手を使って、所有者を見つけようとする部分も、なんとなくえげつない。悪人とまでいいきれない、ささやかな強欲ぶりであるだけに余計たちが悪いという感じだ。
もっとも、中盤あたりから、その当選金額のあまりのでかさに一人で(正確には3人で)支えきれなくなったせいからか、村のみんなで共有しようということになり、それが、ようするに誰もが田舎の小市民なんだなと思わせるような展開となり、かわいくみえてきたりもするのだが。でも、せこい(金額はでかいけれども)話ではある。
老いたふたりの友情はいい。教会での挨拶には泣ける。ただどうしてもそのシーンが必要だったのかというとそうではなくて話の都合上という感じがした。描きたかったテーマが友情ではないんだろうな。
クライマックスで、村一番の偏屈ババァが最後にあまりにも劇的(笑)に死んじゃうのが、カタルシスであるといえばいえる。
ババァもそうだし、若い女に手を出したネッドといい、結局、この映画でいいたかったことは、へんに欲をかくとろくなことがないですよ、ということなんですかね。なんつって。ようするにとある田舎町に降ってわいた、たなぼた騒動の顛末と、わりとありきたりなオチというのが、いいたかったのだろう。それでも地球は回っているみたいなね。
真っ裸でバイクをかっ飛ばすじいさんはかなりいけてた。これにアイルランドの陽気な、でもどこか哀調も帯びた民俗調の音楽が実にあう。ドタバタ喜劇的で。