(名演技:黒猫と白猫)
とっちらかったおもちゃ箱。2組の恋の顛末。友情の誕生。
もうとっちらかってゴッチャゴチャなおもちゃ箱のような映画。あまりごちゃついていて、ついていけない部分もあるのだが、それも味ってところでしょうか。
前半がね、なんか誰に感情移入するかもよくわからないまま、あれよあれよという間に話は展開していくんですわ。とある間抜けな男が列車をパクろうとして、組んだ仲間にだまされ、借金のかたに息子の結婚を迫られる。と、まとめるとそういう話なのだが、ようするに望まない結婚という状況設定を作り出すためのルーティンワークな味気なさがあったりするのだ。ごちゃついていてわかりにくい上に設定を把握しなけりゃならない。これがけっこうつらい。
ところが後半、いやいやながらに結婚することになったふたりが、いかに逃げ出して、お互いが求める相手と結ばれるかのドタバタな顛末は、えらくめっぽう面白い。滅茶苦茶なキャラと話ではあるが、それが実にはまっているのだ。おそらく前半の登場人物がおおむね受身だったのが、後半にはいってガンガン動きだしたせい。特にようやく主人公たる青年ががんばりはじめて感情移入できたせいでもあるだろう。
そうなると、ちゃかついた演出も実に生きてくるわけですね。面白い。
演出はかなりいかれてる。象徴に満ちた寓話的。廃車を食べるブタ。大木に縛られたまま演奏するバンドメンバー。きわめつけは、黒猫白猫。意味なく要所要所に象徴的に登場しているように見えて、実はクライマックスに、ふたりの結婚の立会人(立合猫?)という大役をこなす。
とにかく大騒ぎの末、最後はきれいにまとまってハッピーエンド。実におおらかなフォークロア的作品であった。何も考えずに観るとけっこうはまるタイプだろうね。