(監督:イワン・ポポフ)
子猫ちゃん、ご用心。
決してハッピーエンドじゃない。
まあ、キュートなこねこの一挙手一投足は、アクセル全開フィーチャーされているので、それが観られればオーケーと割り切ることができれば二重丸なんだろうけれどね。
話は波瀾万丈のようでそうでもなく、実際にはチグラーシャは以外と簡単に家族の元にたどり着くことができる。拍子抜けといえば拍子抜けだったが、猫に無理な演技をさせないでできる範囲内ではこの程度が限界でもあろうし、自称動物好きのどっかの誰かがやったようにネコちゃんが『映画づくり』の名の下に虐待されることのほうがイヤだからね。まあ、十分です。
しかしストーリーはいいとしても、あのエンディングはひどい。ありゃないよ。
確かにチグラーシャは無事、再び暖かい家族の元に戻ることができたのだが、実は作品の本当の主役といってもいいフェージンの家族は、一見、また全員一緒に暮らすことができハッピーエンドのようにもみえるが、その実、職も失い電気も止められた部屋で未来もわからぬまま新年を迎えるという、どうしようもないやるせなさで幕を閉じる。これじゃ、あまりにも救いがないっす。もちろん、大いなる不幸ではないけれど、明日へつながる希望の予感が描かれていないため、どうしても不幸の影を想像してしまうのだ。ロシアの哀調をおびた音楽がそんな印象をさらに強調してしまうし。なんか… もっと、いい終わり方はなかったのかなぁ、とそう思わずにはいられない。
例えば、残された猫たちはそれぞれが家庭を手に入れることができたというような終わり方に持っていくこともできたはずなのだ。実際そういうエピソードも入っている。それなのに、結局、猫たちは男の元に返ってくるのだ。もちろんそれはそれですばらしいエピローグたり得る。ただしそれは男自身の希望もまた描いてやらなければいけないのではないか。このままでは全員が不幸になってしまう可能性を示してしまう。ようするにフランダースの犬のラストみたいなことになったらイヤなんだよ。
虐待演技がなかったのはよかったのだけれど、そこんところがちょっとがっかりでした。