(怪演:吉村作治)
どこかでみたよな冒険活劇。ただひとつ違うのはヒーローが中年。
とても普通の映画だった。いや、映画を観たのだろうか。観ていて映画を観ているような気にどうしてもなれなかったのだ。まあ、冒頭のいきなりナレーションでエジプトのロマンを語られちゃったのがかなり“寒かった”せいもあるのだけれど。
平凡。という言葉が一番この映画を表していると思うのだった。
エジプトの秘宝と犯罪シンジケートといったパーツから簡単に想像できる話。展開もお約束通りで破綻も飛躍もない。冒険映画のもつ波瀾万丈の大冒険やどんでん返しの連続というものがなく、ハラハラドキドキとは無縁だった。
演出もひねったりせず、込み入った伏線も張らず、積み木を積み上げていくように、時系列順にそのままカット割りしている。基本的には説明ショットの連続で凝った映像はいっさいない。古代のロマンに思いをはせる系の詩情豊かな線をねらったせいか、笑いをとる余裕もない。これをもって安定した演出ということもできるが、どうも平板な印象なのだった。
せっかくエジプトロケでピラミッドやスフィンクスや異国の街並みを背景にしているのに、映像としてのスケール感、奥行き感が感じられないのは何故だろう。どうも決して日本映画のショボさではないとは思うのだが。多分、画角や色合いといった技術的な面を含めてのレイアウトが“違う”せいなのだろうが、しかしよくわかりません。
つまりTVのお金かけた2時間ドラマを観ているようなのだ。話も映像もそのスケール感においてなんかテレビフレームレベルなのだった。別に2時間ドラマを否定しているわけではないのだが、やっぱりメディアが違えば撮り方も違ってくるのではないかと思う次第。
てなわけで、オレの中では実に淡々と物語は進んでいく。真犯人も定番で思いがけない真相というものはなく、なにかの追体験をしているような変な感じなのだった。
ただクライマックスでヒロインが撃たれて死んでしまうのにはちょっとびっくりである。だって話の展開上、不必要だったから。主人公が怒りに燃えるきっかけにすらならない。だってもともと親友を殺されたことから話は始まっているのだから。ここにさらに輪をかけて人死にをだす必要はない。でもおかげで定番話とは違うものになったのも事実。で、ラスト、銃の弾切れとガソリン引火のくだりはお約束であるがゆえの高揚感があってまあまあよかった(笑)。
しかしヒーローが中年というのにはどうにも割り切れないものがあるな。