(監督:ナディア・タス)
大好きだったパパの歌。
もとより泣くために行ったのだから当然である。すでに準備はできていた。
泣いたよ。泣いた。もうマジ泣きである。
メインテーマともいうべき曲『ユー・アンド・ミー』が心に残る。映画館を出て、駅へと向う道すがら、頭の中でリフレインする。それだけで、もう目の奥が熱くなる。音楽というものが根源的に心を揺さぶる力を持っているのだから、これはもうどうしようもないことなのだ。
そんな“音楽の力”と“心の癒し”をメインに、人のつながりと希望を描いたのがこの映画である。
父の死によって言葉を失った少女は音楽だけがコミュニケーションの方法だったというアイディアも秀逸ならば、それを活かしてラストのカタルシスへ持っていくストーリーテリングも見事である。
夫を失ってなお、気丈に生きていこうとする母と娘。それを理解することなく、二人を引き離そうとするお役所の杓子定規なもどかしさ。
下町の一見排他的で、実は人情に熱い人々も(定番的描きかたといえなくもないが)いい。普段、車いじりばかりの若者や、愚痴をこぼすばかりの老婆も、クライマックスではじけるための伏線としてはまっている。
街の警官たちがまたいい。エイミーが誘拐されたと誤解があったときの、ふたりの警官が歌うシーンで「ああ、なんて気のいい人たちなんだろう」と思わせ、それはクライマックスの歌う捜査部隊で結実する。これが実におかしいのだけれど、そこに描かれている愛情が伝わってきて泣けることこの上ない。人っていいもんだと思わずにはいられない。
ラストシーン、夜から朝へと時は移る。陽の光とともに街は動き出す。市場が、路面電車が、人々が動き出す。一日のはじまりである。そして新しい人生のはじまりでもある。いっぱいの希望を抱いて。
エイミーの芸達者ぶりも愛らしく(地下鉄で歌うシーンなど号泣もの)、多少の粗も些細なことだ。いやはや。ホント子供ものに弱いなあ、オレ。