(監督:塩田明彦)
ジュンイチロー谷崎。
一見さわやかな青春ドラマのようでいて、実はフェチでマゾな男の子と次第にサディストの自分に目覚めていく少女の一風変わった成長劇。
なんだ。じゃあ、やっぱり(さわやかではないけれど)青春ドラマじゃんか。いや、ある意味さわやかといってもいいかもしれない。だって本当の自分をさらけだしてまで貫ける一途な愛ってやっぱり青春でしょう? 違うか?
ヘンタイのどこが悪い? 話はこれに尽きる。
愛する気持ち、相手を想う気持ちに、にヘンタイもノーマルも本当は差などない。その表現の仕方が違う。ただその差だけしかないのだ。
もっとも、その表現が問題なんだよな。愛される相手からしてみれば、やっぱ怖いわけですよね。理解できないということが。だから拒絶されてしまったりもする。う〜ん、かわいそうすぎるぜ、ヘンタイは。
もっとも冷静になってみれば結局ストーカー的であり、ひとりよがりの押しつけであったりもするのだが、しかし“実害があるから”罪となるわけで、ただ“ヘンタイだから”を理由に人格を否定するのはいかんというわけだ。
ま、オレはどうしても男の側から観ちゃうし、その結果こんな感想となるんだろうけど、ようするに『ヘンタイだって純愛なんだ』というただそのひとつの真理をつきつめた、そういう話なんですね。
実は、対する少女の心の動きがいまひとつわからなかったのであった。
初恋の相手がヘンタイだったのは確かに笑えない悲劇だ。けれど、それに対して復讐的な気持ちで、先輩とつきあうのはありですか? どうも復讐というよりは自己破壊のようだ。加虐的自虐行為とでもいうのだろうかね。
だからなのかラストシーンに描かれた二人の姿がなにを意図しているのか、ストレートにはわからなかった。一番わかりやすい解釈としては『加虐嗜好の自分の本性に気がついた』なんだろうが、それだとあまりにもいかにも。フィルム上から漂う雰囲気はなんかもっと観念的で『落ちるところまで落ちた自分と男から決して逃れることのできない諦念』をオレは読み取った。きっと両方なんだろうね。
そんな深読みや曲解をしちゃうのも、透明感のある映像、叙情的な演出、等々に騙されているのかな。いいか。面白かったんだから。
ヒロイン紗月役のつぐみ。バデーもナイスなんだけど、肉厚の濡れた唇がモーレツにエロティック。清純なのにコケティッシュで放たれるオーラにもうクラクラ。ロングの黒髪の間からキッと睨まれたりしたらオレでも奴隷に…(バカ)
ま、それはそれとして。純な少女から、女王様的加虐嗜好へ変化していく様を、蛹が蝶(あるいは毒を持った蛾か?)に変化していくがごとく、実に美しく演じている。いいっす。