(監督:ジョン・ウォーターズ)
とってもとってもシャッターハイ。
なんてキュートな話なんだろう。
とにかく観ているだけでなんかワクワクしてくるのだ。というのも、ペッカーがあたり構わずシャッター押しまくる姿がとてもよかったから。
カメラを手にしたときのワクワク感、シャッターを押したときの快感。撮った写真ができたときの純粋な感動。そんなもろもろが画面全体から溢れ出ているのだ。
話はそんな、なんでも撮ってるだけでもう満足、撮る行為自体が本当に楽しいところからはじまる。そしてあれよあれよという間に、なぜかNYの画廊で個展を開くことになり、そしてあれよあれよという間に認められていってしまう。
ただ、それがいかにも偶然であるかのようにサラッと描かれているが、実はペッカーの才能と努力の結果であることに気づいただろうか。写真は町の人々の生活の断片を見事に切りとっている。そしてそんな才能を皆に観てもらおうとする努力(自力で個展を開く)もしている。それは『目立とう、売れよう』というような即物的な野望ではなく、もっと単純に見てほしいという表現者の本能に近いのだろうけれど。
なんて、それほど大仰で気張って力説するようなことでもないのだけれど、ともあれそういうポジティブな行動があったからこそ画商に見いだされたのだということだ。
で、そんな成功の影にはいろいろと毒もあって、「売れることによる誤解や嫉妬」もあり、また「状況が変わっていくことによる人間関係の変化」がある。
また、オレとしてはこれが一番身につまされたのが「被写体の側の論理」。カメラマンとモデルとの関係について。スナップ写真愛好家としては、本当にどこまでが許されるのか。肖像権や個人情報と、表現の自由や表現の欲求と折り合いなど、普段から考えているところでもあったので、ちょっとシリアスに考えてしまった。
もっとも映画はそんなあれこれを突き詰めていくことはなく、けっこうあっさりと流してしまうのだけれど。
そんなこんなで、ほのぼの系のアットホームな雰囲気のままラストの大ハッピーエンドに突入する。だから話としてつめが甘いという印象を持つ人もあるいはいるかも知れないなと思った。でもこれでいいのである。だってこの映画が描きたかったのは問題提起なんかじゃなくで、写真をとおして自分の住む町や家族や恋人とよりわかりあうというハッピーな童話なんだから。