CHART-DATE : (2000/01)
作品
簡単な計画
… シンプル・プラン

(監督:サムライミ)


お話

 ふりしきる雪。黒い烏。不吉な予感。不幸な予感。


お話

 シンプルな映画だった。なんていう感想だといかにもあざとい書き出しだが。

 見はじめと観後感との印象がぜんぜん違う。
 はじめはなんか嫌な感じだったんですよ。平凡な人間がたまたま大金を手にしたことから、どんどん悪いほうに転んでいってしまう。そんな話だということはわかっていたわけだが、その男たちに対して全然感情移入できない。腹立たしささえ感じるのだった。それは彼等が悪事を働こうとしたからではなく、その男たち(Bパクストンは別だが)が短慮で刹那的で無為で、ただ生きているだけの人生の脱落者であるからだ。
 それには様々な人生の浮き沈みがあっがゆえということは、頭ではわかるが、しかし薄っぺらな欲望のために薄っぺらな考え方しかできない人間をオレはどうしても受け入れることはできない。そんな底の浅い者たちによって、自分の知力をふりしぼって目的(それが悪事だとしても)を達成しようとする努力を疎外する、そんな人間関係に対していらだちを覚えるのだった。
 もちろん、その短慮な選択肢の誤りで、より失敗の深みにはまっていってしまうこそがこの話の要なのだけれどもね。

 そんなわけで半ばいらいらしつつ観ていくのだが、これがクライマックスに実に見事に結実していく。本来、愚図でノロマの兄の単純(あるいは純粋)であるがゆえの選択はなんと胸をしめつけるものだろうか。その純粋であるための苦悩を浮かびたたせるための前半であったといっても過言ではないだろう。

 ラストシーン。すべてが徒労に終わり、もっとも大切なものを失ってしまった残された者が負う永遠の悲劇。
 全編を通しての白い雪景色は、観るものに凍てつく寒さを感じさせる。それは生きることがどれほど辛いものであるかを思い知らさせる。

 サムライミ色がまったくないというのにはある意味がっかりな気持ちがないではないが、しかしこのシンプルな悲劇にはこの選択しかなかったのだろうとも思う。不満はない。骨太なドラマを観た。


お話

 主人公の妻が一番、人間らしい。あるいは一番悪役っぽい。黒幕だからなのだろうけれど。


お話
★★★★

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