(監督:アレクディオ・グリマルディ)
肉を食う(いろんな意味で)。
夫のいぬ間のつかのまの情事。
ストーリーを煎じ詰めると結局これだけのお話である。文芸っぽくても芸術っぽくても、ようはポルノである(もちろんけなしているわけではない)。
不倫話というとどうしてもドロドロとしたドマラティックなストーリーを想像するのだけれど、そんなことはなく美しい人妻がいかにして情事に至ったを淡々と描いているだけ。それも派手な心理描写などはなく、象徴的なカットがぽつりぽつりと入るくらいで、あとは日常生活(美術館の館長(?)なので生活臭はあまりないのだけれど)。
そんな感じなので、見終わっての教訓もない。ほら、この手の話の常套手段としての、不倫の末の幸せの崩壊とかそういったやつ。単に一時の情事がありましたという、本当になんでもないエンディングなのだ。
結局、南イタリアの特徴的な街並を背景とした雰囲気映画なのであった。
あえて。子どもができないことへの罪悪感や不安感、お互い愛し合っているはずのにずれていく夫婦の気持ち、荒々しい力への渇望、肉に対する欲望、自己破壊の衝動など、細かいエピソードを拾い上げてつなぎ合わせてテーマを深読みしようとすればできなくはない。しかしそこまでしなければならないほど深い映画でもないと思う。
だから要するにポルノなのである。と、断言してそれでいい。それだけでいいのかもしれない。だってエロティックな気分を味わうというそれだけで十分に作品としての存在意味はあるのだからね。