CHART-DATE : (2000/01)
作品
めだか
… シュリ

(監督:カン・ジェギュ)


お話

 愛と哀しみのスナイパー。


お話

 一言でいえばよくできた面白い佳作。定番のメニューを上手に料理している。
 トリッキーではないが、タイトにまとまって過不足のないまとまった設定とストーリー。際立ったクセはないが、キレのいい映像と演出。とにかく全体のバランスがいいのだ。

 話は予想の枠を越えることはなく、次の展開は容易に推測できる(例えば北側のスナイパー、イ・バンヒの正体は登場した途端にわかる)。しかしそれでもいい。なぜならここで描きたいことは“誰なのか?”ではなく“どうなったのか?”。ある事件の、そして愛の行方だからだ。それをどう見せるのか、そして、どう落とし前をつけるのかが焦点なのだ。
 脚本がしっかりしているからだろう。ストレートな話ではあるが、けして一本調子で単純というわけではない。緩急おり混ぜて、なおかつちょっとした遊び的な要素も挿入する余裕(コネ入社君のエピソードなど)もある。なによりストーリーを語る上で、台詞で処理してしまうのではなく、映画として“魅せる”ための脚本となっている。上手い。

 ただラストがあれでよかったのかどうかは難しいところで、もっと別の終わりかたがあったかもしれないなとも思うのだった。少なくともキッシンググラミーのエピソードを完全に生かしきってはいない。もっとも、そんな感想を持ったのは「泣ける」という前宣伝の割には、意外と悲劇性が強くなく(十分切ないけれど)オーソドックスな終わりかただったせい。とはいえあれ以上悲劇にすると見ているほうも辛すぎるし、逆にハッピーエンドなんかにしたらウソ臭くなってしまうし、仕方のないところだろう。

 あと、この手の映画にとって一番厳しいのはチープさが出てしまうことなのだが、これもうまくいっている。セットや小道具に湯水のように金をかけているということはないが、見せかたが上手いのだ。アクションシーンでのいいテンポでみせるカットの上手さだけではなく、中盤でももたつかない演出の冴え。見ていて冷めることなくクライマックスまで引っ張れるというのは演出がいい証拠だ。

 自分は銃器マニアではないので、なにが出てきたとかどう使われたとかにはあんまり興味はない。映画として魅力的であればオッケーなのだ。その点で少々引っかかるところがあり、それはあれだけの銃撃戦なのになかなか当たらないこと。相当に厳しい弾幕が張られているのにけっこう何度も逃げられている。ストーリー上やむを得ないとうことは重々承知の上で、あえてもう少しうまい手法があったのではないかと、いっておきたい。

 やはり現実問題として、ただでさえ陸続きの国境を持たないわけであり、“38度線が実際に目の前にある現実”という国の状況を肌で知り得ない立場としては、そのリアリティ(危機感や哀しさ)を実感することはできないのだろうなとも思うのだった。


お話
  1.  しかし生首といい鮮血といい、ちょっと露骨過ぎるのはオレとしては好みじゃないんだよな。もっと押さえたトーンのほうが好き。
  2.  ハングル語のフロントエンドプロセッサがいいねぇ。まあローマ字入力と同じなんだけど、入力しやすそう。

お話
★★★★

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