(監督:Higuchinsky)
ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる
楽しかった。POPでグロテスクで悪趣味なオモチャ箱を与えられたよう。原作の持つ奇妙な質感はそのままに、怪しくて奇なる世界が展開される。いいじゃん。
凝りに凝った演出、映像美。全編これ眼福。もとより異形が徘徊する話をそのまま映像化しているのだ。眼福にならないはずがない。出し惜しみなし(でもないか)。巻髪やヒトマイマイが動き回る地味な田舎町の不可思議な出来事。あの世界をスクリーンに定着させようとする願望はここに結実した。
ただし、正攻法のSFXホラー映画を求めて観るとちょっと違和感があるかも知れない。“つくりもの(映画=虚構)”であることを意図的に強調しており、大技小技含めたデジタル合成やマット合成、画面の色彩調整もわざとらしいくらいに作り込んで、いい意味でのウソ臭さがでている。画面のすみに時折出現するうずまきなど端々まで世界感を描くための目線がいっていると思った。
ただ、小サイズのフィルムなのかデジタル撮影なのかわからないが、粗めの画質についてはやりすぎな気がしなくもない。それにデジタル合成はちょっと目立ち過ぎたのが興ざめと言えば興ざめなのだが、でも面白かったから許せる。
話は全部で4章に分けた凝った作り。原作のようにひとネタごとの連作形式ではなく、シャッフルし凝縮した形で再構成されているのが、うまいと思った。全ての怪異がクライマックスに凝縮され、カタストロフとして爆発している。
(ただTVニュースという形で一瞬、しかもとめ絵で現れるだけというのは残念。もちろんそういう手法もありだなとは思うのだが)。
オープンエンディングでオチのない終わりかたも評価はわかれるかもしれない。数々のうずまき現象の謎の解明もなく、“古代の呪い”を匂わせる程度で、しかも謎に一番近づいた人物を効果的に消してしまう。そういう展開はオレ的にはもちろんありなんだけどね。
ともあれ、観ていてバカバカしいまでの悪ノリぶりに満足。細かい遊びも多くて、繰り返し観たい映画。「繰り返し」とはすなわち「うずまき」。そうか、これがうずまきの呪いかぁ。