CHART-DATE : (2000/02)
作品
1900の伝説
… 海の上のピアニスト

(監督/脚本:ジュゼッペ・トルナトーレ)


お話

 いい物語があって、それを語る人がいるかぎり、人生、捨てたもんじゃない。


お話

 ダメだ。絶対にダメ。“死”で泣かせようとする話はいかん。嫌いなのだ、そういう安直な発想は。いくらどんなに優れた話であろうとも。
 いや、死を描くなということではない。死は等しく誰にでも訪れるわけで、それ自体は(悲しいことかも知れないが)受け入れるべき事実である。だからそれをことさら協調して泣いてくださいというのは安直だということなのだ。だいたいオレは『死』が泣きツボじゃないので(だって悲しくないから)、よけいそう感じてしまうのかも知れない。
 しかし本当にいけないのはそれではない。“自ら死を選ぶ”こと、“必要とされる才能を見殺しにする”こと、これが許せないのだ。確かにあの状況で死を選ぶしか道がなかったとしてもね。その気持ちはわからないでもないが、しかし映画としては、あっと驚くアクロバットをみせて幸せな結末に着地してをみせてほしかった。  現実の社会では、なんの価値もなくただ無駄に生きている人ばかりの中で本当に必要とされる人々が不慮の死を遂げてしまうという不条理が満ちているのだ。せめて映画の中だけでは夢を描いてほしかった。

 と、お怒りはここまで。あとは褒めます。
 とにかく情感たっぷり、ウェルメイドなつくりでみせてくれる。
 なんといってもそのストーリーテリングの見事さである。現在と過去のふたつの時間軸を交差させつつ、1900という不思議で数奇な運命を辿ったひとりの天才の人生を活写していく。
 船の上で生まれ育ったという設定をここぞとばかりに見せつける、嵐の中大揺れの船内を平気で歩き回る1900の格好のよさ。これで観る者は主人公に一気に感情移入するね。そしてその非現実感は、なによりこの話が大いなるファンタジーに満ちたものであることを描き出す。そしてさらにたたみかけるように、一気に『踊るピアノ』のシークエンスになだれこんでいく。このシーンは前半の見どころで、1900の奏でるワルツにのりホールを踊りまわるグランドピアノ。まさに夢のような映像美を味わえる。
 そう、とにかくなんといっても1900のピアノが主役だ。JAZZ勝負でのケレンに満ちた演出。圧巻である。音楽なのに眼福なのである。
 もとより船の上という限られた空間が舞台なのである。ボイラー室の無骨な力強さや、ダンスホールの豪華さ、雪の夜空の朝焼けの甲板。その質感/迫力/存在感に圧倒されずにはいられない。

 これでオチが完璧に決まればなぁ。ないものねだりなんですかねぇ。


お話
  1.  主人公がいいコちゃんの聖人君子ではなく、ワルガキ的な茶目っ気なのがそてもいいよね。
  2.  もうひとりの主役。ペットふきの男マックス。いつも目が動いているの。あれって地? 演出? なんかすごく気になった。

お話
★★★★

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