(監督:ティム・バートン)
前言撤回探偵の名推理
面白い。純粋に娯楽作。ゴシックホラーなテイストではあるが全然怖さを売りにしたつくりじゃない。首がポンポン飛ぶが凄惨な印象はまったくない。殺される被害者に思い入れがないせいもあるのかも知れないけれど、むしろ画面にスプラッタにありがちなギラついた殺伐感がないからだろう。SFXによって滑らかに自然にスッポーンと斬られていくせいかも知れない。
ティムバートンはモンスタームービーのつもりで撮ったのかも知れないが、オレは名探偵モノとしてみた。「超常現象を扱っていても論理的な推理を行う限り本格ミステリー足り得る」という詭弁(笑い)を用いるならば「超常現象を扱っていても名探偵が謎を解明していくことを主眼とするならば本格探偵もの足り得る」ということだ。いやマジで。
そうして考えると首無し騎士の扱いも合点がいくのである。確かに騎士はかっこいいがそれは絵面だけのこと。モンスターの持つ怖さや悲しさなどはあえて排除されているように思える。それもそのはず、だって騎士の役回りは『犯人』ではなく『凶器』だからだ。ね、ミステリーでしょ。
首無し騎士は凶器役だが、ポジションとしては狂言回し役に近い。それは主人公イカボッドにもいえるのだけれどね。彼もまたある意味怪物だから。時代の主流からは外れた存在という意味でね。
オレが一番思い入れを感じたのは実は全体の雰囲気、画面づくりという部分なのであった。色彩のトーンを押さえ、背景も人物もSFXもすべてゴシック絵画のような美しく怪しげな世界としてフィルムに封じ込められている。
実はかなり小ぶりな話ではあるのだ。舞台も小さな田舎の村の中だけで登場人物もさほど多くもない。しかしそのせいで逆にタイトにまとまった世界を創りだせたわけだ。