CHART-DATE : (2000/03)
作品
奇妙な泡と関係者
… ブギーポップは笑わない

(監督:金田龍)


お話

 僕はジドウ的なんだよ。


お話

 あのブギーポップをどう映像化するのか。変則的な原作はどのように再構成されるのか。実はかなり期待していたのだった。しかし予想外に、なんとも思いきり原作に忠実で正攻法な脚本&演出。てことはかなりひねくれた映画になったということだ。

 4つの異なった視点、異なった主人公から描かれるひとつの奇妙な事件。まったく原作どおり。ストーリー構成を同じ手段でやることについて、いろいろな意見/見方はあろうけれど個人的には痛し痒しだった。ダメとはいわないが、そうまでして一緒にする必要もなかったのではないかとも思う。映画ならではの語り口があってもよかったのではないかということだ。

 変則的な構成自体については、「難解/意味不明/観る者の足を引っ張る」というようなことにはならなかった。原作を先に知っていたせいもあると思うが、映像による表現方法は、具体的な“絵”でみせることができるために、時間軸や視点軸の変化があっても比較的スムースに納得できるためだろう。

 さて、問題がひとつある。それはブギーポップ。正確にはブギーポップの衣装だ。もっと押さえた、象徴的なものにでもなるのかと思ったのだが。よもや、そのまんまとは思わなかった。絵だから、文章だからこそ成立するイメージがあると思うのだ。ブギーポップという異質な存在を映像としてどうリアルに置き換えてくれるのかをオレは一番期待していたところなのだけれどね。
 絵に描かれた衣装を実写にそのまま置き換えるという表現方法では、どうしても陳腐なコスプレ状態に陥ってしまう。なぜそれがイヤかというと、別にコミケのコスプレ野郎を連想させるから… ではなくて、リアルが感じられないせいだ。なにをもってリアルかという根本な問題もあるのだけれど、少なくとも『自動的に出現するブギーポップ』がわざわざあんな衣装を作ってる姿を想像できないでしょ。もし実際にそんな存在があるならば、おそらく単に黒い布切れをまきつけただけの影のような、まさに死神のような姿になるのではないか。つまりそういうことなのだ。リアルとは画面以外での背景や状況をあり得るものとして納得できる、ということである。リアルとは、いわゆる“現実的”ということではなく、その世界(ストーリー)において整合性がとれているということなのだ。
(もっともマントの中の宇宙はけっこう好きだが)

 ストーリー自体もまんまやるのではなく、原作をモチーフとして再構築していくほうがよかったのではないかとも思う。“都市伝説的な寓話”“大人とは別の世界で動く事件”“メサイアコンプレックス”など、もっと膨らませられるツボがたくさんあるのだから。別の話になっちゃうとファンがひくということがあるのかもしれないが、そもそも原作ファンは、どうやっても満足なんかしないのだから、いっそもっと壊してくれれば、少なくとも一人は喜んだと思うのに。

(そんなこといって、結局楽しんでたんじゃねーの)
(う、ま、いーじゃん)


お話
  1.  眼球へのディープキスはすっごくエロティクでよかった。怖い。
  2.  吉野紗香が期待以上によろしい。マスクをぐっとつかむところとかね。あ、上といってること違うじゃん。
  3.  煙草は二十才を過ぎてから。じゃないの? 現実社会がどうあれ法律は法律、監督の演技指導に深く猛烈に抗議する。もっと演出で対処するべきである。別に美輪明日美好きだからというわけじゃないよ。

お話
★★★ ☆☆

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