(監督:マーティン・スコセッシ)
永遠に病んでいる。
結局、何がいいたかったのかさっぱりわからなかった。
主人公は救われない。いや救われたのかもしれないが、それが観る側のカタルシスにつながらないのであった。
人をどんなに助けたとしても、そして助けるのをやめても、疲れきった心はけして癒されることはなく、ただ愛しい人の胸の中で眠るだけがつかの間の休息。しかしそれすらも癒しにはならない。
救われないのは主人公だけではない。登場する誰もが傷つき、現実に押しつぶされ、希望を見い出すことはできないでいる。
つまり都会では誰もが病んでいくしかない、というただひとつの現実を描いた話なのだ。
演出的には、ドラッグでもやったかのようなアッパーな高揚感とダウナーな沈滞感が交互に登場するのが、面白いともいえるし、混乱しているともいえる。それはあるいは主人公の心の混乱状況をそのまま絵にしているのかもしれない。
ひとつの大きなストーリーを語ろうとしているのではない。結末のないドキュメントのようだ。結局なにがなんだかわからないまま、あれよあれよという間に主人公が暴走してなにも解決せず終わる。だから観終わってなにも残るものがない。
難解な都会の寓話であった。そう思うしか救いがない。