(監督:フィリップ・ノイス/原作:ジェフリー・ディーヴァー)
ボーン・イン・ザ・USA…
ミステリーは『ネタが命』の部分が多分にある。かなり出来のよいミステリーが原作ということで、映画化がわかった時点で読むのをやめておいた自分の判断をまずは褒めたい。おかげでとても楽しむことができたのだから。
これは原作のよさなのかもしれないけれど、シリアルキラーを題材としながら、それが快楽殺人ではないことに非常に好感を持った。もちろん犯人が“サイコ”な部分を持っていたが故の犯行ではあるのだけれど、そのモティベーションはあくまでも復讐であり、その手段としての連続殺人であるところがいい。最近のミステリーの傾向として快楽殺人犯の大安売りの状況が続いていただけに(あ、そういうのも嫌いじゃないけれど)、殺人を楽しんでいるのではないということが、逆に目新しい(という状況はあまりに健全じゃないけれど)。
話の根幹をなすのはひとりの天才の再生の物語である。死を望む男がいかにして生を勝ち取ったのか。つまり生きる意志を描いている。 と同時にこれは『マイフェアレディ』の物語でもある。映像ならではの“絵が雄弁に語る”表現で、ふたりの関係がより鮮明に浮き彫りにされている。なんて思ったがそこらへんの違いは原作を読んでからのお楽しみということにしたい。
とても押さえた渋い演出にも好感をもった。ショッカー的な見せ方、露悪的な見せ方を極力廃し、あくまでもさりげなく、それでいて残忍性も加味してきちんと見せているのが上手い。