(監督:スティーブン・ソダーバーグ)
全米史上最高額の和解金を手にした… のは誇大広告。
宣伝でいうよりも『前向きな頑張る女性の映画』ではなかった。いわゆる「頑張って元気出して」というのではない。ポジティブではあるが、もっと切羽詰まった、瀬戸際土壇場のパワーを、より感じた。なんというかもっと痛々しいのだ。それはそのとおりで一銭もない状態で3人の幼子を育てなければならないとなれば、そりゃ当然だろう。
それに頑張る目的が「人のため」じゃなくて、結局自分のため、自分の存在価値を感じていられるから、というものもリアルで生々しい。
(そう感じるのはオレ自身が自分のアイデンティティを探して迷走する日々なせいか?)
ともあれ、主人公エリンの戦いの目的は、被害者の人々のためではなく(まったく違うというわけではないが)、あくまでも自分のためであるということだ。これを偽善と呼ぶのは簡単だが、しかし偽善もまた善なのである。なにもしないよりはよほどいい。だから彼女の戦いはまさに正しき行いなのだ。
というわけで、訴訟の話であるにもかかわらず、クライマックスが法廷劇ではないというのは自然の流れである。
「彼女はいかにして目的を見つけ、戦い、妥協しながらも最善の方法を模索し、自分を見いだしていったか」
これがこの映画の目的であり、それ以外のエピソードを盛り込む必要はないということだ。