(監督:リー・リクチー/チャウ・シンチー)
ピュウピュウ
香港映画特有のとりとめもまとまりもないバカ話。面白さ優先で、とってつけたような刹那的なエピソードの羅列。一歩間違えれば、支離滅裂のまま終わってしまう、そんな話なのだ。
例えば、弁当配りの親父が実は香港警察の秘密捜査官でマフィアへの潜入調査を依頼されるエピソードなどは、その場で思いついた話くらいに全編から浮いている。カレン・モク扮する超有名女優との主役への抜擢からキャンセルに至るエピソードも全然膨らまそうとせず、唐突に決着をつけてしまう。要するに、ノリ優先で深みのあるストーリーテリングは後回しにされているのだろう。
そんな映画、本来ならダメよと言いたいのに、でもなんか憎めないんだなぁ。ちゅーか、観ていて心が和む和む。こりゃ、いったいどういうことかね。
もともと映画などの制作現場の舞台裏の物語ってオレツボなんだよ。
それに、才能があるのにあまりにも人と違いすぎるため誤解されがちな異能者、はすっぱでアバズレなのに実はとても純なヒロイン、そんないい歳こいた男女の純情な恋、みんなみんなオレツボ。その素直じゃなさがとてもキュートなんだ。
(でもやっぱり一番の理由は“香港好き”につきるのだけれど)
冷静に考えれば、それほど凄い映画という程でもない。でも観ることで何某かのしあわせを味わえることこそが重要であるならば、これはやはりいい映画だったのだといいたい。