(監督:赤根和樹/原作:河森正治)
エスカといえば… そう、江ノ島だ!
もちろんTVシリーズはチェックはしていたが、さほどど熱心な視聴者ではなかったのが逆に功を奏したか。キャラや設定が同じようで微妙に違う並行世界的内容なのだが、TV版の呪縛があまりない分、その差や違いに違和感なく観ることができた。
シンプルな話だ。
剣とちょっとの魔法によって成り立つ世界の、国々の攻防の物語であり、強大な敵による世界の危機と、それを防ごうとする伝説の力の物語である。それらをつなぐのは人々の想い。どこかで観た話的な部分がないわけではないが、異世界ファンタジーとして、2時間弱という時間に納まる範囲内で過不足ない話にまとめあげられている。
あまり手を広げず、シンプルなそしてストレートな話故、破綻や未消化な部分もでず語りたい物語を一気にみせる。TV版の大河ロマン的印象はなくなってしまうのは、物理的にしようがないのだが、その分、『あるひとつの物語』という形に特化することができているともいえる。ただ、あまりにもシンプルすぎて食い足りない、あるいはそれでもダイジェスト的な印象を持ってしまう人もいないとはいえない。
なるほどと思ったのは、巨大ロボットものとしてのTV版からファンタジーものへとリフォームしていく上で、より世界観を純化するためにロボットを(ほぼ)カットしたこと。出てくるのはクライマックスの戦闘シーンぐらいのものだ。そしてそれを補うのが剣による肉弾戦、特に竜の民の持つ超能力を含めての戦いのシーンはひとつの見せ場といえるだろう。クライマックスでようやく現れる巨大な鎧もその巨大感を十分に感じさせる演出をみせ見事(でもデザインが悪いので興ざめ)。
しかし手放しでいいというわけではない。
話の根幹をなすのはひとみとバァンの心のつながりだが、ちょっとその展開が性急すぎ、取ってつけた感じがしないではない。特にひとみは急に「バァンを助けたい」などと言い出すのは無理がある。
どちらの視点から描いていくか曖昧のままがそのせいだろうか。
もしひとみサイドから描くのであれば、バァンと出会ってどのように心境(人生観?)が変わっていったのかをもっと丹念に描き、そこからバァンとのつながりが浮き出てくるという描き方の方がよかっただろうし、ひとみが自分の世界にもどってどうなったのかも押さえるべきだろう。
バァンサイドから描くのならばひとみの住む世界の話などは不要で、あくまでも異世界から訪れてた、冷え切った心を溶かしてくれた翼の神として描くべきだったのではなかろうか。
ま、それは自分ならこういうのがいいなというだけのこと。
なんだかんだいっても地味めの作品ではあることは確かだ。マニアックな対象に向けての映画であるともいえる。しかしこれだけ丁寧に作られた作品なのだから、マニアだけのものにすることはないだろう。