CHART-DATE : (2000/06)
作品
十字砲火
… クロスファイア

(監督:金子修介)


お話

 みんな燃えてしまえ!


お話

 はじめから悲しい結末であることが運命づけられている物語である。そのままなら救いのないいたたまれない話になってしまう。それをどう納得させ、カタルシスに結びつけていくのか。それが一番の不安であった。
 宮部作品の最も重要で貴重なファクター“小さなエピソードを積み重ねて本筋を浮かび上がらせる語り口のうまさ”は文章ならではのテクニック(でもないか?)であり、また上映時間という制約もあり、なかなか映像にしづらいものである。
 金子監督は、映像にあたって別の魅力で描き出さねばならなかった。そこで主人公に対し恋人とその妹という設定を加えることにより、復讐者となる理由を明確にするとともに、復讐者であるが故の戻ることの出来ない悲しみをストレートにかつ前面に押し出し、観る者の感情を主人公の存在の哀しみに焦点を絞る。そういう方法を選び、そして成功している。

 全編をを通じてトーンが安定しているのも観ていて心地よい。息抜きのつもりで変に笑えるシーンなどを入れてダレるような作りにはせず、最初から最後まで緊張感を持続させる。これが監督を演出の力ということなのだろう。

 またSFXものは下手をするとどうしても陳腐なものになってしまいがちだが、こちらのほうも安心して観ていられた。単純に発火するするシーンも適度なケレンとリアリズムでパイロキネシス表現がチャチなものにならずに見どころとして成功している。特に雪が舞う中での抱擁シーンは熱気の膜に雪があたり溶けていく実に幻想的で哀しいシーンとなっている。(ただ全身炭骨化するCGはちょっとチャチか?)

 全体的にはB級映画のテイストを忘れていない。大作、大メロドラマ、大ロマンなどへんに背伸びせず自分のフィールドをわかって作られている。こういうタイトな佳作が増えてくれると嬉しいのだけれどね。


お話
  1.  冒頭、主人公がひとりで鍋を食べるシーン。鍋にどうやって火をかけているのか? もちろん“やってる”んだろね!
  2.  恋人の妹、着やせするタイプとみた!

お話
★★★★★

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