(監督:ケヴィン・スミス)
おれは好きだけどね。カモノハシ。
作りは荒っぽいけれど、その分いきがいい。怪作にして快作である。
宗教(聖教だね)を茶化しているようだが、その実、宗教のあるべき姿、その本質を高らかに描き出している。宗教とは、宗教組織のためにあるのではなく、信じる者こそが主役である(民主主義の理想と一緒だね)という実にあたりまえの真実なのだが、現実にはなかなかそういうわけにはいかないんだなぁ。
神とはなにか。
ここでは「ただ信じれば救ってくれる大いなる存在、全ての審判をくだす巨大な力」ではない。それが当然なのだ。すべからく宗教とは、信者が他力本願で思考力停止的な愚者となることを求めているのではなく、また信者はそうなるべきではない。
神とはたんなる存在であり、心の規範のひとつの形である。故に宗教とは人の理想のあり方の指針である。
意識的にも無意識的にも個人の思考や主義を弾圧し自己の判断を歪めようとする、宗教という名の体制/圧力/組織を、もっとも嫌うオレとしては、そうなんだよ! と思わず手をたたくばかり。 そんなことを思いつつみていたわけだ。
が、話自体はそんな肩のこるような堅苦しいものではなく、軽くてクールでちょっとばかりブラックな楽しい宗教ファンタジーコメディである。深刻でも悲惨でもなく、オールハッピーな結末というわけではないのだけれど、そこには十分過ぎほどにに救いがある。
突然救世主になることになってしまった主人公と、そのちょっとぬけた従者の珍道中がメインの粗筋で、だからストーリーはロードムービー的に展開する。ロードムービーに外れなしという仮説は周知のとおり。もうひと組の堕天使二人組のエピソードと交錯しつつ、ラストの神の救いまで一気に話は疾走する。
ノー天気に笑い、時にハラハラドキドキしながら、そしてラストにはちょっとしたポジティブな力をもらうことができる。これ以上なにが必要といえるのだろう。
こういうネタをさらりと描きあげることができる底力はすごいよなぁ。
神様。キュート。いろんな意味で。神の声のシーンはオレつぼですごくかっこいいシーンのひとつだ。