(監督:ブライアン・シンガー)
人間なんてララ〜ラ、ラララ、ラ〜ラ〜
一般的にコミックヒーローの映画化はどうしても陳腐になりがちで、それをいかにリアルな話として成立させるのかが制作者の腕の見どころなのである(もちろんあえてわりきって陳腐でキッチュに走りきれればそれはそれでアリなのだが)。
で、このX−メンだが、“リアル”を指向し、そして見事に成功している。『コミックヒーローアクション映画』ではなく、『異端者達の戦いのドラマ』を、みせてくれたのだ。だからアクション映画を見たかった人にはけっこう肩すかしであったかもしれない。しかし、だから「この映画は違うよ」というのは正当な評価ではない。
もともとマーヴェルコミックは屈折したヒーロー像に特徴があり、それはX−メンも同様だ。なので前宣伝の『マイノリティの苦悩と戦いを描いている』も、
「んなこといってもといってもどーせ、ヒーローものの味付け程度だろう」
ぐらいにしか、思っていなかった(何度か見たアニメ版もそういう印象だったので)。予断はいけないと反省した。本当にアクションではなくドラマを重視していたからだ。
その印象は演出の違いから感じたのだった。アップが多用され、抑制された浮ついたところの少ない絵づくり。科白も寡黙でも饒舌でもない絶妙のバランスである。これらの過不足のない演出は、アクションムービーを進めるための文法ではなく、ドラマを語るためのそれである。上手い。
もちろん、だからといってアクション面がおざなりとなっているというわけではない。こっちはこっちで、スピーディーでメリハリのきいた小気味のいいアクションをみせてくれる。SFXも“SFXでござい”的な使われ方ではなく、かといって目立たないわけではなく、つまり上手い使い方をしている。
ステレオタイプのエンディングといい、敵が変なヒーロースーツを着てみたりと、ところどころ鼻知らんでしまうところはないわけではないが、それは些細な問題。これだけ楽しませてくれたなら文句ナシ。クールなストーリーに効果的にアクションが組み込まれることでヒーローコミックのアクションというプログラムピクチャーの枠を超えた映画として完成されていると思った次第である。