(監督/製作/主演:クリント・イーストウッド)
○イトスタッフな○ルマゲドン。っていったらあまりにも身もふたもないっす。
宇宙に行きたかった男たちの物語である。その想いは長く待たされたからこそ強く堅く、だから自分たちがスケープゴードにされていることがわかっていてなお、宇宙へと飛び立っていく。そして為すべきことを為す。それが自分たちのミッションだから。
男たちの宇宙への想いには葛藤がない。それはあまりにも当然の願いであり人生の目的であり誰にもとめることのできない根源的な本能といえるまでに身体に組み込まれているためだ。普通なら誰かが躊躇したり、体力的な挫折があったりというドラマがあってしかるべきなのだろうが、ここではそういう障害はいっさいない。
そうなるとあまりにもあっさりと話が終わってしまうわけで、そこで登場するのが裏に潜む陰謀である。それを承知の上で挑む男たちの物語はこれはこれで十分に魅力ある話であるが、それにべったりのポリティカルな話が全面にでてしまっては殺伐となってしまうし老いたライトスタッフたちが宇宙に行かねばならない必然性がなくなってしまうので、そのバランスのとりかたはうまくいっていたのではなかろうか。
犠牲的精神による解決の仕方(特攻)は、安直な泣かせのために生命を弄んでいるようで嫌いなのだが、今回はそれがラストシーンの「月へ行く」という目的を持っての行動であるということが嫌らしさを相殺していると思う。つまり(真意はどうあれ男の強がりとして)誰のためでもない自分のための行動という理由がそこにあるからだ。ガンに侵され死が近いからここで死んでもいいという生命の軽視ではなく、死が近いから今しかチャンスを逃さないという、よりポジティブな生命感を描いているのだ。
こんなにも盛り沢山でクセが強い話であるにもかかわらず、全体の印象は淡々とひょうひょうとしたもので、味わい深い。想像していたよりもいいほうに裏切られたのであった。