(監督:チャン・イーモウ)
マニマニマニ〜
一見、ハートウォーミングな感動の物語のようでいて、実は随分とひどい話だった。
貧しい山村で健気に暮らしているからといって純朴な子供達というわけではない。そこには金のためという世知辛い現実がある。
この手の話の黄金パターンとしては「はじめは金のためやむなく代用教師を引き受けた主人公ミンジであったが次第に先生としての自覚と責任感に目覚めて…」というようなありがちな展開にはならず、手段が目的化してしまうという話の転がりかたはあっても、結局は金のためという基本的な部分は変わらない。もちろんそれもこれも貧しさからくるもので守銭奴とかそういうわけではない。おそらくそれは社会システムや政治システム自体が抱える欺瞞や矛盾なのだ。そこに触れるつもりはないが、しかし、その根本的な現実こそがこの映画が語る問題提起である。
とりあえず子供を見つけることができ、抱えきれないほどのお土産を手に入れることができ、みんなに笑顔が戻るのだが、これが大団円のようでいて実はそこにも救いはない。一時のカンフル剤は口当たりはいいかもしれないが、継続はない。あっという間に都会の人の心からは村のことなど消え去り、また違う“可哀想な誰かさん”に安直なお駄賃を与えて自己満足する。そういう一過性の善意という無邪気な悪意を見落としてはならない(もっとも偽善もまた善なりという考え方もあることはあるのだが)。
これが(我ながらひねくれているなとは思うが)素直に喜び感動できない理由である。
ただ、途中のいかにも子供らしい強引な金の工面の仕方や、金策がいつの間にかいっぱしの勉強になっていくくだりなどは純粋に面白く、そういうシーンがあるから救われているともいえよう。
そしてなんだかんだいっても、みんなが好きな言葉を黒板に書いていくラストシーンにはちょっと目頭が熱くなってしまった。