(監督/脚本:フェルザン・オズペテク)
大奥秘巻
歴史ものはやっぱり苦手なので、どうも話に乗れなかった。
ハーレムという特殊な環境に渦巻く、愛や権力、陰謀などを絡めつつ、オスマン帝国の終焉に居合わせてしまったハーレムの女の生涯を語る。
ただ、王宮の女の物語としては、数奇な運命というにはあまりにも普通すぎたし、ハーレムという秘密のベールに閉ざされた空間の持つ淫靡さは文芸調の演出にかき消され(もともとそれでいいのだけれど)、いまひとつ「これだよ!」という焦点が定まらないままに話が終わってしまったと思うのだった。
一番よくわからなかったのが、話の入れ子構造。
主人公のサフィエがたどった運命を、老境に入った本人が過去を語るという話を、ハーレムのお付きの女が昔語りするのだが、このお付きの女は、一番下位の階層の回想であるサフィエと同時代に存在しているのだ。つまり時系列的に直線にならないねじれた円環構造(?)になっている。で、とてもわかりにくくなっている。
映像的にはきらびやかで美しい民族衣装に満ちあふれ、コスプレ満載的な眼福で見ごたえはありました。