(監督:マーティン・キャンベル)
人を魅了してやまない雄大な雪山。その大自然も時として訪れる者に牙をむくことがある。そのとき悲劇は起こった!
こと映画としてみた場合、かなりアラがあるというのは紛れもない事実である
ピッケルふたつで飛び移るシーンを筆頭とする様々な危機的状況でのアクションは、まぁそれがないと“アクション映画”として成り立たない部分でもあるからいい。もっとも、そのトラブルが天災というよりは人災的なものが多く、その迂闊さが“生死の境目を進む救出劇”という緊張感を今ひとつ欠く要因であるように思われるが(もっともそういう安直なキャラクターだからこそ登る気になったという解釈もできなくはないか? やっぱりこじつけかな…)。
問題は設定的な部分である。例えば、いかに金持ちを助けて大金を手に入れるためといっても、命の危険のある場所に行こうとするものだろうか? おそらくもっと別のモティベーション(例えば肉親を助ける、あるいは復讐)がないと厳しいのではないか。だから6人も集まるというのはちょっと真実味に欠けるような気がする。
一番胡散臭いのはニトログリセリン。あんなに扱いの難しいものよりTNTとかのほうがリアリティがあると思う。第一あんなに危険なもんが容易く漏れたり爆発したりするのはヘン。そもそも何故パキスタン軍がニトロを保管しているのかという根本的な問題も含めて、いかにも話を展開させるために取ってつけたというような感じがしてならない。
多くの犠牲をもってしてはじめて成立する救出劇ということ自体、オレとしては「なんだかなぁ」という感じがする。もちろん父親の死を転機としてふたつの方向に分かれていった兄弟の心の絆の再生という部分については十分に納得はできるが、それにしても、その対価として犠牲は再び払われているわけだ。3人を助けるために6人を投入して最終的に3人というのは、いかにもあざとらしい展開に思えてしまう。要するに感動を強要をされている気持ちがするのだ。特にラストのケルンのショットなどはそのもっともたるところであり、あれで単純に感動する気にはなれない。
さて、だからといって退屈だったのかというとそうではないのがまた面白いところ。なにしろ山なのである。8千メートル級の山登りの風景状況(ベースキャンプでの生活やその様相など)がみられるというのだけでも楽しめちゃう。雪山や岸壁などを進む様子だけでもドキドキできるし、滑落や雪崩のシーンではハラハラできちゃうのである。
それに山グッズ満載というのもうれしい。いろんなウエアやザックやテントが見られるのもうれしいし、ピッケル等々のオレのレベルでは到底使う機会のないクライミンググッズの使用シーンが見られるのもうれしい。まあ、映画として観るというよりは山のカタログとして観ている気がしないでもないが、そういう楽しみかたのできる映画というのも、それはそれでありではないか。