(監督:スティーヴン・ダルドリー)
踊り、踊〜るなら〜、チョイト、ロンドン音頭、ヨイヨイ
いかにも英国映画っぽい、登場人物の感情を直接的に表現しない、一種突き放した演出。“なぜ?”の説明をわかりやすく解説するするような野暮なまねをせず、ただ彼らはどういう行動をとったのかという事実、出来事だけを描いていく。
主人公ビリーがなぜバレエをするに至ったかの説明すらないのだ。
本当はないのではない。その彼のとった行動そのものが答えになっている。だからあえて注釈をつける必要がなかったのだ。彼が踊ることで自分を表現しているその姿そのものが、純粋に“踊ることが好きだから”という事実を逆説的に強く説得力を持って描き出している。
そうやって安直な説明がないため、よけいにダンスシーンの躍動感が映えるのだ。
メジャー志向(?)の感情ベタベタな演出ではないので、観ていて涙を誘うとか、感動に打ち震えるというような強いツボ押しはない。あくまでも淡々と乾いたムードで、親子の、兄弟の、友人との、関係を見つめている。
映画としてそれがいいのか悪いのかはよくわからない。例えばもっと情感豊かに描くことで(確実に泣かせる演出方法は存在するのだから)、観客のカタルシスを作り出すほうがいいのだと思わないこともない。しかし、このような突き放した感覚で描くことで、かえって炭鉱夫という労働者の抱える問題や主人公の踊ることに対する熱情を、観終わった後まで心に残すことができたのかもしれないとも思うのである。