(監督:マチュー・カソヴィッツ)
はぐれ刑事パリジャン派
アレレ。てな感じ。ごく普通のサスペンスミステリーだったのね。
予告から勝手に「これはサスペンスホラーだ」とばかり思っていたのである。具体的には吸血鬼テーマだ。ま、いいんだけどね。違ってても。
それはそれとして見どころが多い映画である。
まず絵がいい。冒頭からグングン引き込まれていく。舞台がいいのだ。とある田舎の閉鎖的な学園都市。ずっしりと歴史を感じさせる年を経るものだけが醸し出す威圧感。そしてなんといっても後ろにそびえる山脈。これだけでも観る価値あり。
そして校内で起こる連続猟奇殺人とそれにまつわる大きな謎。それを追う刑事達。これだけお膳立てが整っていればどう転んでも“ダメ”はないでしょ。
ま、でも、話は実際にはそんなに濃くない。かなりあっさりしている。学園ぐるみの巨大な陰謀はいいとして、そこから派生した怨念あるいは復讐としての犯行動機が弱いのだ。「人生を犠牲にされた」といっても、よく考えれば生き延びれられたのだから、別に逆恨みするようなことでもないように思うのだ。だから謎を明かされても「ああそうなの」というくらいの感想しか持てず、より深いエモーショナルな部分を揺り動かすようなことはなかった。そのフォローとしてサイコであるというのは唐突だろう。
せっかくネオナチ(?)の陰謀という大きな背景を抱えているのであるから、もっと“大いなる世界的危機へ発展する可能性”みたいな大風呂敷を広げてみてもよかったのではかなろうか。
とはいってもそれはあえていうならここをチェックみたいな部分で、ことさらに突っ込む程でもない。いろいろと食い足りない部分、あるいは端折りすぎた部分が、多少はあるにせよ、もともと面白い話なのは確かなのだ。しかも『絵面がいいのは七難隠す』の諺の示すとおり(そんな言葉ねぇって)、オレは楽しめたのであった。