（監督：ガイ・リッチー）

　アフガニスタンバナナスタン

　シニカルオフビートなスラップスティッククライムコメディ。

　分かりにくいという前評判は確かにそのとおりで、それはなんでかというと、冒頭からいきなり主要登場人物ほぼ全員が登場するせいだ。各々がいったい何を目的に、何をしようとしているのかを整理する間もなく、ただひたすらにまったくわけのわからないまま各自が勝手に動きまわる。そりゃ混乱して当然だろう。
　もうひとつは映像的な時制体がかなり独特な点か。やたらめたら細部にこだわったかと思えば、時間を追っての説明はなくわずか数ショットだけで状況を説明してしまったり、複雑な関係をカットバック処理でみせてしまったり。一歩間違えればガイキチか、なんかヤッてるのかと思うくらいのゴチャゴチャ加減のせいもある。もっともこの手の表現方法は最近流行りの傾向でもあるのである程度見慣れていればそんなにつらいものではない。むしろ一種の映像的快感でもある。ま、でもかなりスレスレか。

　そんなわけで見始めてからしばらくは結構しんどいのは事実なのである。もっとも話が進んでいくにつれて、その中身も整理されていけば（ストーリーだけじゃなく登場人物も整理…　つまり死んでくってことだね！）、これが俄然面白くなっていくのだ。

　実のところ、ストーリー自体は見かけほどには複雑ではない。８９カラットのダイヤをめぐる右往左往（争奪戦ではなく！）の物語。しかも、話としての決着をどうつけるのか、ということも実はさほど重要ではなく、主眼は登場人物それぞれの巻き込み巻き込まれ状況。そのわけわからん状況をスタイリッシュに楽しむというのが正しい鑑賞のしかたなのだな。と、オレは思ったわけだ。

　賭博屋の黒幕がとにかく嫌な奴なんだけど、しかし思うのは「なんでまわりの連中、キレないんだ？」ってこと。だってあんなヤツ、一発撃ちこんじゃえばそれで終わりじゃん。とか思うオレって危ないかしら？