(監督:ターセム/脚本:マーク・プロトセヴィッチ)
世界の中心で愛を叫んだけもの
とにかくなんといっても圧倒されるのはそのビジュアルである。
幻想的にして妄想的。狂気をはらんだ美しさ。快楽という名の悪夢。残虐的で扇情的でそれでいて清廉さを保ち続けている。
ココロに障害を持つ(といういいかたが正確かどうかはわからないが)者の精神に入り込むという魅力的だが無謀なアイディアを画面に定着させるという挑戦に見事に成功している。嫌らしい見方をすれば、そこに描かれるものはあまりにもわかりやすい典型的な狂気的ガジェットといえなくもない。がしかし、それでもその絢爛豪華なインナースペースデザインは『凄い!』の一言。しかも「ここが凄い」のではなく「全部凄い」のだ。う〜ん、これほどまでに眼が離せない映画は久しぶり。
しかも。こういう映画は往々にして絵づくりにばかり気を取られて、話がなおざりになってしまうものだが、そういう不安は心配ご無用とばかりに、サイコサスペンスとしてきっちりと話をまとめあげているのだ。
話としては犯人の心に入るというくらいだからフーダニット的謎ときはない。その代わりに与えられるストーリーの牽引力は囚われた被害者を時間内に救出すること。そのための手段である精神探索が、やがてもうひとつの物語を生む。
被害者の救出、そして犯人の心の救済というふたつの物語は互いに絡み合いながらそれぞれの結末を迎える。
とにかく。見事。