(監督:本広克行)
あの子はただ人より声の大きい正直者… ってそんなまとめでいいんか?!
不覚にも大泣きしてしまいました。いやはやトシとったもんだ。おかしくって、やがて涙がポロリ… という、もう究極必勝パターン。エンターテイメントの王道だよ。
前半は“サトラレ”という存在がおこすであろう奇妙なトラブルというシチュエーションコメディの部分を前面に出し、とにかく笑わせる。例えば、病院内でのサトラレと、患者や同僚といったまわりの人々の関係や、特能委の大仰な隠密行動など、つかむところはとことんつかんでくる。しかも単に笑かすだけじゃなくて、サトラレの抱える本質的な悲劇もきちんと伝わってくるのがうまい。
そんなこんなでいろいろと話は進み、そしてクライマックスの手術のシーンでは完全に感情移入してしまっているオレなわけです。もうツボにはまりまくりの泣きまくり。ちなみにオレはいままで痛し痒しだった関係の病院内の人々の想いがひとつになった瞬間にグッときました。
冷静に考えればかなり無理のある話ではある。サトラレという設定自体の持つ無理さについてはとりあえず「国益のために絶対に本人にばれないようにする」というエクスキューズはさてれいるが、それでもかなりきびしい。また、その部分をよしとしても、今度はサトラレという能力を持つ者を守るためにあれ程の国家予算を投入する価値があるのかなどの問題もある。こちらもそれなりの「知能という部分だけではなく、手先の器用さや判断力、機転、独創性、その他もろもろの、全ての部分において普通人よりも圧倒的な差がある財産」というエクスキューズはあるが、いまひとつあっさり流されてしまっている。
もっとも、あくまでも「無理がある」というのは冷静に観ちゃえばのはなしであって、映画の持つテンションにうまく乗ってしまえば全然気にならないのも事実だ。
エンディングも脳天気なただのハッピーエンドではなく、余韻の残る幕切れで、実に抑制がきいている。うまい。ホロリ泣ける。