(監督:グレゴリー・ホブリット)
電波の力!
時間テーマものってやつは基本的に佳作になる可能性が高いような気がする。それはおそらく、時間テーマはタイムパラドックスを初めとする様々な設定上の制約を持っており、それをどうストーリー的にクリアし観る者を納得させるかが必要であるためだろう。ストーリー上に起こる全てのエピソードは伏線として活用せざるを得ず、整合性を求められるともいえる。
結果、それを果たそうとして脚本を作っていくことによって必然的にトリッキーで面白い脚本へと練られていくことになる。ま、あくまでも原則として、だけど。
で、この作品であるが、その例に漏れず佳作であった。
メインアイディアは、アマチュア無線での通信だけが時間を越えて現在と過去(あるいは現在と未来でもいいが)つながっているというもの。だから通信器機が壊れれば連絡はとれないし、リピート性がない(何度も同じ時間を繰り返すことはない)ので、やり返しがきかないところも緊張感を増すのだ。
ストーリーとしては、『死んでしまった父親を助ける』という部分までは前宣伝等でわかっていたせいで「それがメインの話なんだろうけれど、でもパラドックスはどうするのかがポイントか?」と思っていたら、その話のほうは前半の1時間でけっこうあっさりと解決。あれれと思っていると、ここからさらに話が広がっていき、冒頭にチラッとあった連続殺人事件へと発展していく。これは予想していなかっただけに唸らされた。思い返せば「なるほどあれが伏線なのね」とは思うが見事。で、話はその事件をどう回避していくかが焦点となる。うまいなと思ったのは、先にも書いたとおり「リトライがきかない」という制約が生み出す緊張感である。
そして通信しか手段がないと思われた過去から現在への連絡のとりかたなど、細かいアイディアもきちんとはまっていてこれも見事。
ただ、クライマックスでのちょっと強引過ぎるハッピーな結末については若干鼻白むところもないわけではない。しかしそれはご愛敬といってもいい。なんたってそこまで十分に楽しませてくれたわけだから。