CHART-DATE : (2001/04)
作品
人喰い博士の逆襲
… ハンニバル

(監督:リドリー・スコット)


お話

 人を食った話。


お話

 リドリースコットの、ピンと張りつめた糸のような遊びのない演出。全体を包みこむ暗闇が醸し出す不安感。ゴシック的な造形が呼び起こす重厚感。幻想的な映像。観る者によってはショッキングであろう陰惨で凄惨な情景も、悪夢のような美しさを感じさせる。見事なのだ。それは確かなのだ。
 さすがリドリースコット。そう思う。
 しかし、にもかかわらずこの作品を楽しむことはできなかった。

 理由は単純。話が単調で退屈だったから。それに尽きる。
 後から考えれば、それなりに紆余曲折のある展開ではある。しかしそれがきちんとした盛り上がりを感じさせるまでに物語としての波には結びつかなかった。
 監督はじっくりと丹念に、ねちっこいまでの引っ張りで話を紡いでいく。そのことで、話のスピード感はどうしても消されてしまう。それは仕方がないことだ。そして話がレクター自身を描くということを目的とする以上、そんなゴシックホラー的ケレンは正しい判断だろう。
 ならばそれを補うためにも速度感を補うキャッチーな仕掛けをいれていかなかればならないのではないか。例えばアクションシーンでもショッキングなシーンであってもいい。頭を揺るがす衝撃が欲しかった。話が話として動き出すのはフィレンツェでの惨劇からで、それまではあまりにも平坦すぎる。あるいは、それはレクターという狂気を映画を見る前から知ってしまっているこちらの感情インフレかもしれない。しかしそれを承知の上で、あえていいたい。やはりもう少し動きのある話だったらなぁとね。


お話

 あるいは、結局レクターのインパクトだけで走りきってしまった話だから、“物語”としては弱くなったということなんでしょうか。
 それはそれとして、一応、『博士の異常な愛情』というのがテーマなんだろうけれど、だったらここはやはり、クライマックスで自分を傷つけるのではなくクラリスのほうをバッサリいってほしかった。悪趣味かもしれないけれど。
 クラリスを不可侵の聖域とする必然性は、映画上ではまったくないと思ったから。もっともそうしたらしたで、ショッキング重視の安直な展開みたいに思ってしまうのかも知れないけれど。


お話
★★ ☆☆☆

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