(監督/製作:コーエン兄弟)
小悪党ばかりで深みにはまる。
なんだろう。すごく不安定な気分の映画だった。どういうタイプの話なのかがわからない。本気のスリラーなのか、スリラーを皮を被ったオフビートギャグなのか。はたまたパロディなのか…
基本的に映画を観るときには予備知識が少ないほうが楽しめると思うのだけれど、まったく知らないで観るというのはそれはそれできついものがあると思いしった。
なぜ、そんなことになったのかというと、冒頭で「この映画は10数年前にインディーズで云々…」という説明がまことしやかに入ったせいだ。それってどう考えてもギャグにしか思えないでしょう。だからイントロの台詞全てもその後の笑いにつなげるためのフェイクなんじゃないかと思ってしまうわけね。
で、本編のほうはというと、いやに古っぽい絵づらの陳腐な犯罪映画で、誤解と勘違いとケチな欲からまきおこる殺人事件。あまりにも典型的(本当はそうでもないのだが)な段取り劇にみえるため、どこかで卓袱台をひっくり返すような大ドンデン返しがあるんじゃないかとつい身構えてしまい、話に集中できなかったのである。「騙されないぞ」と変に身構えちゃったわけね。
話が進み、クライマックスあたりまでいくと主人公達の命が狙われ、無事助かるのか? 生き延びるのはどちらか? とそれなりに話に引き込まれはするのだが、全体的にはやはり「本当にこのまま話にのっちゃってもいいのかしら」と宙ぶらりんの気分のまま映画を見続ける自分がいる。
エンドクレジットではじめてこれがコーエン兄弟の作品であったことがわかり、そこではじめてそういえばそうだったと思い出したのは間抜けだった。
そんなわけで映画を観るにあたって、多少はどういうタイプの映画なのかぐらいは知っていたほうが話にうまくのれるのかね、と思ったのであった。
最後になるが、話自体は(陳腐だけど)つまらないわけではなかった。実は『観客を宙ぶらりんの状態にして話を展開させる』『笑えないおかしみ』というのは、実にコーエン兄弟の持ち味であるわけで、作家性というのは確かにあるのだなぁと思うのだった。