(監督:マレク・カニエフスカ)
粋にやろうぜ、粋にな。
小粒なれど小気味よい快感。いいじゃん。明るい犯罪映画。好きだなぁ。
なにがいいって悪党が善人なところだ。いや、善人というとのはちょっと違うか。自分の欲望のために安直に人を殺そうとはしない。人を殺して奪うのは簡単だが、そんな低能な真似はしない。しかし人道的というわけでもない最後の手段のしての殺しの覚悟はある。ようするに“粋な犯罪”なんだよね。紳士ともいえる。う〜ん、ニュアンスがうまく伝わるかなぁ。
主人公キャロルは自分の今の生活に満足できず、もっと自分の可能性を信じていけるはずだという気持はあるが行動に移せるわけでもない。そういう悶々とした日常をブレイクスルーするための手段として『強盗』を思いつくわけだが、しかし、それにもかかわらず、なのかだからなのか、とにかく切羽詰まった崖っぷち感はない。だからといってそれが成り行き上そうなってしまった無責任なものというわけでもない。さりとて人を傷つけてまでなさねばならないという悪の部分がない。意思と意識の問題である。だからそれはエレガントなのだ。
対する年老いた(?)銀行強盗ヘンリーも、裏切ったり騙したりしたとしてもケチで安っぽい商売を許さないという自分への“しばり”をかけている。カッコイイ。気骨が感じられる。
さて、しかしこんな小粋な、お洒落な犯罪映画。いいのだが、あえて重箱の隅をつつくとしたら、それはクライマックスからラストにかける最後の山場がちょっとストレートすぎに思えたところ。「やられたっ! まんまと騙された!」というあっと驚くドンデン返しが弱いのでカタルシスがいまひとつ。もっともそれは贅沢すぎる注文というものだろう。
ともあれ、小粋な悪党は健在なり。ラストのツーショットは、だから予定調和ではある。しかしそれは誰もが望む結末だ。ハッピー!